異世界と勇者とO・T・O・3

───【登場人物(♂4:♀1)】───

緒方(♂)

轟(♂)

大清水(♂)

男神官(♂)

女神官(♀)


───【本編】───


男神官

「魔王軍の侵略は、とどまるところを知らない……」


女神官

「報告を受けているだけでも、すでに多くの都市や村が魔王軍の手に落ちてしまいました……」


男神官

「報告できない街がある可能性を考えると……か。

 この神殿も、近いうちに魔王軍に落とされるかもしれない……!」


女神官

「だから、今のうちに……異世界からの勇者を、召喚しなければ。」


男神官

「世界の命運を異世界の者に託すのは摂理として好ましくないことだが……今さらどうこう言ってられない。

 ……始めよう。君は、陣の反対側へ」


女神官

「はい!」


男神官

「……よし。

 『いずこかの世界より導かれし、強大なる力を持つ勇者よ──

 我らの世に降り立ち、世を救わんことを願う』」


女神官

「『導きの陣よ! 我らの願いに応える者を、この場へ呼び出したまえ!!』」


緒方

「お困りですか、若者よ!(若者よ)(わかものよ)」


男神官

「っ! 来たッ!」


女神官

「異世界の、勇者……!」


「お困りなれば、いざ行かん!(いざ行かん)(いざゆかん)」


男神官

「えっ!?」


女神官

「あれっ、二人……!?」


大清水

「三人である!!!!」


O・T・O・3おとうさん、陣から飛び出す)


緒方

「悩みを抱えるこの世界!」


「ならば我らが救うため!」


大清水

「別の世界からいざ参らん!!」


緒方

「オー!」


「ティー!」


大清水

「オー!」


緒方

「緒方!」


「轟!」


大清水

「大清水!」


緒方

「三人組ッ!」


「略して我ら! 」


緒方・轟・大清水

O・T・O・3おとうさん!! 」


女神官

「どういう、ことでしょうか……」


男神官

「勇者は一人、のはずだが……」


緒方

「どうしたもこうしたもなかろう!」


「この世界が悩みを抱えている! なので我らが来た!」


大清水

「助けを呼ぶ声が、我らをここに導いたのだ!」


男神官

「……間違い、ない。彼らのうち誰かひとり、ではなく、

 彼ら3人、合わせて勇者なのだ」


女神官

「そんな、ことが……!?」


緒方

「では行くか轟!」


「善は急げだな大清水!」


大清水

「そうだな緒方!」


男神官

「えっ!? ちょ、ちょっと待ってください!」


女神官

「いきなりどこへ行こうというのですか!?」


緒方

「世界を救うのだ」


男神官

「救っ……!? あなたたち、この世界に来たばかりで、こちらのことは何もご存知ないのでは……!?」


大清水

「そういう情報は足で稼ぐと相場が決まっている!」


女神官

「ダメです!

 あなたたちが異世界から召喚された人だからと言っても、既にこの神殿の外は魔王軍の勢力で溢れています!

 闘う力を持たなければ、すぐに命を落とすことになります!」


「ぬぅん」


男神官

「……コホン。異世界より導かれし勇者よ。この『希望のさかずき』をもって……」


大清水

「どうした神官殿」


女神官

「……まさか!」


男神官

「……一人分だ、これ……!」


緒方

「なんだってぇ!?」


「ところで、そのさかずきがどうしたというのだ」


女神官

「このさかずきを持って念じると、強大な力を得られると言われる『神の水』が湧くのです。

 それを飲むことで、魔王軍とも闘える力を得られるでしょう。」


男神官

「しかし……先ほども言った通り、さかずきは一人分しかありません。

 お三方のうちどなたか一人に飲んでもらうしか……。

 ……も、申し訳ありません!

 私たちも、勇者は一人という想定をしておりまして……三人同時に現れるとは、ついぞ思いもせず……!」


大清水

「我々でなくとも、それこそ神官殿が飲まれてはどうか」


女神官

「……『希望のさかずき』は、異世界から来た者にしか、その力を示さないのです。

 そのさかずき自体が、最初に異世界に来た者が創り出した物とされていまして……」


緒方

「そういうことであれば仕方ない」


「久々にやるか、二人とも」


大清水

「やはりここはアレをすべきだな!神官殿! さかずきをこちらへ!」


男神官

「は、はい! ……誰が飲むか、すでに決まっているのですか……?」


緒方

「全員で飲む!」


女神官

「全員で、って……回し飲み、ですか!? それはダメです! いや、分かり、ません、が……

 『神の水』は、一人がそれを飲み干して初めて力を得られるものなのです!

 回し飲みでは、得られる力も不十分になってしまい──」


「回し飲みとは、ちょっと違う!」


大清水

「我らの世界で、こういう時の儀式があるのだ!

 二人とも! 盃は持ったか! いくぞぉ! 」


緒方

「我ら三人、O・T・O・3おとうさん!」


「生まれた時は違えども!」


大清水

「死すべき時は同じと願わん!」


緒方

「心を同じく、助け合い!」


「悩める者を、救わんことを!!」


大清水

「『桃園結義ももぞのけつよし』!!!! 」


男神官

「っ!? 盃が、光って──!?」


女神官

「……3つに、別れた!? ひとつひとつの大きさは、小さくなってるけど……」


緒方

「よぉし、これで皆で飲めるな!」


「まるでおちょこではないか! 可愛いものだ!」


大清水

「さあさ二人とも、ここはグイッといこうではないか、グイっと。

 いくぞ? せーのっ!」


男神官

「あのサイズで、効果は表れるのか……?」


大清水

「……おお、おおおお! うおおおお!!

 全身に、力がみなぎってくるのが分かる! わかるぞ!!」


女神官

「やった、成功ですね!」


緒方

「私は上半身に力が果てしなくみなぎってくるぞ!!」


「そして私は下半身がビクンビクンみなぎっているぞ!!」


女神官

「……成功、ですか?」


男神官

「……おそらく、『上半身の筋力』『下半身の筋力』『魔力』に3分割されてしまったのだろう。」


女神官

「……失敗、なのでは?」


緒方

「これでよいのだ!」


「我ら3人、揃ってこそ!」


大清水

「不足は他が補えばよい! 各々が利する力で戦うのだ!!」


女神官

「そ、そうですか……」


大清水

「んむむっ!?」


緒方

「どうした大清水」


「何かをキャッチしたか大清水」


大清水

「助けを呼ぶ声の中に、特に強い声が聞こえてくる!

 これが神の水の力か!! 完全に理解した!!

 この強い声の先に居るのが、魔王軍の幹部に違いない!!

 緒方! 轟! 私の手を握るのだ!」


緒方

「了解だ大清水!」


「任せたぞ大清水!」


大清水

「神官殿たち! 感謝する! 我らが必ず、この世界を救ってみせようぞ!」


男神官

「えっ、あ、はい!」


女神官

「お願いします! この世界を、救ってください!!」


大清水

「『大清水テレポート』!!!」


(3人、テレポートする)


男神官

「……って、魔王軍幹部の場所に直接!?」


女神官

「大丈夫、なのでしょうか……?」

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