変態しかいない(主人公含む)
どこかの研究所の跡地から出てくる中ボスとして設定されているのが、彼女、リアベルである。サキュバスの上位種族、サキュバスクイーンに進化しており、その美しさと淫らさはヴィラン役としては惜しいモノがあった。
女性として理想的なスタイルに、メガネを掛けた知的なスタイル、少し広がるような長いピンクの髪とのミスマッチ感が余計に背徳感を煽る。そんなキャラだ。
装備は常にサキュバス風の衣装の上から白衣を着ている、男の劣情を誘うような服装。
そう、端的に言えばエロい種族なのだ。
その割に自分たちは何もおかしくないとか自然に思っちゃうような種族だから、更に、何というか、エロいんだよな。
しかしそんな天然のエロ種族であるにも関わらず、リアベルには少し特殊な事情があった。それはまた5分後頃の話。
冷静な思考に陥っていると、どこかからガサゴソと動くような物音が、一瞬また男という名の獣達かと思い、去勢してやろうかと身構えたが、その正体を見て安心する。
「リナさん、体は大丈夫?」
「………うん。」
眠たそうな顔でこちらに寄ってくる。未だに慣れないが、流石に適応できるようになった。最初は理性暴発寸前だったにもかかわらず、一晩も耐えきれば、自然に足下に顔をすり寄せてきても、少し、危ういくらいだ。
「うちの家族がごめんなさい。」
「いや、危害を加えられてないから気にしてないよ。」
二度と関わりたくなくなったけど。
「寝ている間、凄い獣みたいな声が聞こえてたから。」
「君のお兄さんが特に凄かったよ。」
一番頑丈だったからな。
崖の上から突き落としても這い上がってくる根性は実際凄い。もっと別の所に生かして欲しくはあるが。
「そろそろ広がっている媚薬の効果は切れてるだろうし、主犯も捕まえたから一度戻るかな?」
「主犯?」
無言で隅の方に居るリアベルの方を指さす。
「あれが?」
「うん。」
まさかのアレ呼ばわり。まあでもお尻丸出しで床に這いつくばってたら、そんな感想にもなるのかな?(←主犯)
リナさんが近づいて、お尻をツンツンすると大げさすぎるほどにビクンビクン震えている。ちょっとキモい。
「もう今からでも動ける?」
「うん、大丈夫。コレはどうするの?」
「縛って、連れて行くかな。」
「任せて。」
どこから取り出したのか分からないヒモを横に引っ張りながら、やる気に満ちているのか、尻尾がキラキラ光っているように見える。
手早く体中にヒモを巡らすように縛った結果、
うん、
亀甲縛りだね。
サキュバスの衣装と白衣と亀甲縛り、人前に出していいような格好ではないのだが。
「どう?」
「役得なのでOK。」
というわけで、許可。一仕事終えたリナを撫でながら、リアベルを引きずって洞窟を出た。
銀虎族。
太古の時代から存在する誇り高い種族。種族特有の強大な戦闘力を有していることから、亜人の中でも二大強者として、伝説の種族として扱われている。
現在、そんな彼らはアヘ顔でくたばっていた。
「陛下。」
「何も聞かないでくれ。」
リナの無言の視線が自分に刺さってくる。だって、怖かったんだもん。
夜中中、香ばしいような、暑苦しいような、汚い愛の言葉をささやきながら追ってくるんだぞ!
結果、気絶させることにした。
少し力加減を誤って、血しぶきが掛かってしまったわけだが頑丈で息も止まってなかったので問題なし。
「近所のおじさん、頭が地面に埋まっている。」
「その人は頭蓋骨が丈夫だったから。」
「お爺さんが川から流れてる。」
「外傷はないじゃないか。」
段々とジトっとした目が力強くなってくる。本当に大丈夫だから、予想以上に頑丈な人たちだったから。
倒れた知り合いと会う度に小声でささやいてくるリナがとても怖かったが、そのまま歩き続けてどうにか目当ての人物を見つける。
「兄さん。」
とても子供には見せられないような体制でノックアウトされていたジャガーをリナが小さく呼ぶ。体中縛られてなお、その上に背丈の数倍を超える岩を乗せられた状態で気絶していた。
そう、一番しぶとかったのはなにを隠そうジャガーだった。
銀虎族の中でもしぶといほどに立ち上がってきて、一夜中カイザーを襲いつつづける無限のタフネスを発揮したのだ。
「兄さん、村の中でもお父さんに続いて強かったから。」
「君のお父さんも中々大概だったよ。」
ジャガーに似た男性がジャガーとタッグで襲いかかってきた。恐らくそれがジャガーとリナの父親だろう。親子でこれは救いようが無いと思う。男の親子丼っていうのは異世界転生して初めてのトラウマ体験となった。
「僕が今まであった中でも彼らは一番の強敵だったよ。」
「うん、兄さんと父さんは私の誇り。」
失った人は確かに今生きてる人の中に生き続けるんだと僕らは学んだ。
「いや、生きてるからっ!!」
「しゃ、喋った!?」
「俺っ、俺はジャガーだ。」
「兄さんは死んだはず。」
「死んでないからっ!!気絶してただけだから、お前本当に俺の扱いどんどん酷くなってるよ!」
「語尾に♡は付いていないな。俺を見て興奮していないな。」
「あっ、はい。大変ご迷惑を。」
反応を見る限り、どうやら発情時の記憶は残っているらしい。彼にとって壮絶な黒歴史になったことは間違いないだろう。顔がすっごく青ざめてるし。
「昨日の夜は何もなかった、ですよね?」
「いや、それ言い回しに凄く不安が、まあいいか。」
俺は油断していた。
リナとジャガーと自分。その三人しかいないと思っていたその場にはもう一人居たことを失念していたのだ。
その過ちが後のち大きくなって返ってくるのだが、それはまた別のお話。
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