第130話 夢のような飲み物
「これが俺の渾身の! メロンクリームソーダだ!」
「わあ、綺麗な色……!」
ユミコさんが目を輝かせる。
ドールのグラスアイのハズなんだが。
「今回はちゃんとメロンシロップ入りだ! 色だけのものじゃなくてな!」
「え!? 今まで私達騙されてた!?」
ミレナが驚き、こちらをじっと見た。
「人聞きが悪いな、たいていはあんなもんなはずだぞ」
「えー、そうなの?」
ミレナはカナタに視線を移した。
「多分、そうだと僕も思うよ、コストを考えたら、だってメロンは高いからさ」
「ふーん」
「マスター、これは私も食べてもいいのですか?」
「いいんだよ!」
スイーツが食べられるようになったお人形の二人。
この記念すべき最初の甘いものに、俺はメロンクリームソーダを選んでふるまった。
とにかくミレナもまたメロンジュースを口にし、
俺達はミレナと違ってソフトクリームを食べてないから控えめにアイスを盛ったメロンクリームソーダをいただくことにした。
透明なガラスのコップに注がれたソーダは、鮮やかなメロン色でまず目を引く。
華やかに、爽やかに炭酸が漂い、カップの上部には白いバニラアイスがトッピングされ、白と緑色のコントラストが美しい。
差し込んだストローでまず、メロンソーダを味わう。
喉に爽やかな炭酸が通り抜ける。
それを追うように、スプーンで掬ったバニラが舌に触れると、絶妙な甘さがふわりと広がり、メロンジュースの甘みと調和していく。
さらに飲み進めると、メロンシロップのメロンの風味がより濃厚に感じられ、口いっぱいに華やかな味わいが広がる。
「わあ、甘い……こんなの今まで味わったことないです! 夢のような飲み物ですごく美味しいですね!」
「そしてとても綺麗です! 流石マスターです!」
確かに彼女達にとってはこれまで味わったことのない、まさに夢のような一杯といえるだろう。
メロンクリームソーダは見た目の華やかさと共に口に運ぶ瞬間から体感できる魅力に溢れているので、これを選んで良かったんじゃないかな?
「ねぇ、ところでショータ、私のメロンソーダにだけ上のアイスがないんだけど?」
「ミレナは舞の後にソフトクリー厶食べたろ? 冷たいものばかり食べたらお腹壊すぞ」
「むー」
あからさまにむくれるミレナ。
「むーじゃない、仕方ないだろ、腹痛でトイレに籠もりたいのか?」
「分かったわよぉ」
「代わりに肉を食わせてやるから」
「お肉!」
「焼き肉だ、ミラとユミコさんは甘いものを食べてな? そのクリームソーダの後はフルーツを出すよ」
「ありがとうございます! でもこれ、とても美味しいのですが、既にお腹いっぱいになりつつあります」
そういえば、すでにペースダウンしてる。
「おや、そうか、人形の体は小さいもんな。
無理せず残していいぞ、俺が飲むから」
「美味しいのにすみません」
二人とも完食が難しくて恐縮してしまった。
これは俺のミスだ。
「ごめんな、今度は小さく作るよ」
「ユミコの残りは私が、引き受けてあげるわ!」
「ありがとうございます、ミレナさん」
「あいつ、ナチュラルにアイス入りクリームを……」
ジェラルドが呆れた眼差しをミレナに送った。
「まあ、残りくらいはいいだろ、捨てるよりは」
「そうよ! 捨てたりするよりはいいの!」
俺のフォローに全力で乗っかったミレナはそして肉は? の眼差しを送ってくる。
「お腹空いてるみたいだし、すぐに焼いて食える焼き肉しよう」
「やったわ!」
ベランダにバーベキューセットを出した。
「ショータ、火が起こせたぞ」
「ありがとう、ジェラルド」
この肉は舞茸と一緒に少しの水と共にチャック付きビニールに入れ、冷蔵庫の魔道具の中であらかじめ寝かせておいたものだから、ある程度柔らかくなってるはず。
取り出した肉を、バーベキューセットの網の上に置いていく。
カナタがタレと取り皿の用意をしてくれている。
ミレナは張り切って汚れ防止の前掛けのようなものを着けた後、ジュージューいってるお肉を見ながらトングをカチカチいわせていた。
「ミレナ、トングをカチカチ言わせて肉を威嚇するんじゃない」
俺はトングをカチカチ慣らしてパンを威嚇するんじゃないというネットの言葉を思い出したのでお肉バージョンにして言ってみた。
「違うわ、これは美味しく焼けなさいという応援!」
そんな応援あるかよ! どっかの悪役みたいだそ。
「狐娘の辞書には多分上品とか品格がないんだろう」
「うるさいわね、陰険エルフ!」
「ワフゥ……」
「喧嘩はやめてくれ、ラッキーが心配そうに見てるだろ」
「ラッキーもお腹空いてるのね! はい! 干し肉!」
俺の言葉を聞いているのか誤魔化してるのか、ミレナはラッキーに干し肉を与えた。
「ワフ!」
この後は美味しく焼き上がったお肉を三人でいただいた。
ミラとユミコさんはもう満腹らしいのでフルーツはまたの機会にってことになった。
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