第114話 船上の戦い
海の温泉から招待してくれた貴族の館に昆布を持ち帰ったらその貴族に声をかけられた。
「あの、聖者様、その昆布はもしや?」
「あ、温泉に入った時に入っていて」
「ください!」
「え? この昆布を?」
「はい! 他の昆布を差し上げますので」
「はあ、他の昆布をいただけるなら別に構いません」
俺は昆布を交換した。
「でも昆布ならまだ温泉ないにはありますよ?」
「聖者様が温泉に入った時の昆布なので! 家宝にして神棚に飾ります! 聖物として!」
「え?」
まさか聖者エキスの昆布を?
確かに俺も同じ石に囲われた温泉に浸かっていたが、それはミレナが踏んだ昆布なんだが。
ま、まあ、いいか、喜んでるし?
あ、ジェラルドが肩を震わせて笑ってるし、ミラは何故かあの祀られた昆布を撮影してた。
とにかくミレナが踏んだ昆布は祀られた。
そのうち乾燥昆布になるだろう。
まじでウケルわ。
* * *
海の温泉を堪能したし、御土産に昆布を頂いて、さあ帰るべと思ったら、よその土地から浄化の依頼が早速きた。
行くしかあるまい。
でも黒髪の聖女はどうしてるのかな?
信者引き連れて別の場所を浄化してるのかも。
「俺は浄化の土地に行かないとなんだが、皆はどうする? すぐ帰るか?」
「ついて行くわよ、何があるか分からないし、護衛はいたほうがいいでしょ」
「ああ、俺もつきあう」
「僕も別に戦力にはならないけど邪魔でなければ行くよ」
「そうか、皆ありがとう」
次の行き先は浄化の地に行くことになった。
貴族様が護衛騎士を付けてくれると言ってくれたけど、落ち着かないし、冒険者の友達が守ってくれるからと、丁重に断った。
地元の市場で新鮮な野菜やフルーツや肉や魚を買い物させてもらってから、俺達はまた船着き場へ向かった。
船の前で冒険者達が数人集まっていた。
その時もジェラルド達は船の護衛の仕事を請け負って、腕に赤いリボンを巻いて乗船した。
俺は甲板から日本のコンビニで買って来たアメリカンドッグなど食べながら海をぼんやり眺めていたら……あ! 波間に何か見えた!
「あれ、ジェラルドあそこ、なんかいる!」
「大丈夫、ただのイルカだ」
ジェラルドも俺から受け取ったアメリカンドッグを食べつつもクールに返事をしてくれた。
これ、美味いな。などとアメリカンドッグの感想を言いつつ。
「なんだ、サメや魔物じゃなくてイルカか! えー、かわいいな!」
「わー、イルカだ!」
カナタもアメリカンドッグを手に嬉しそうに声を上げた。
フェリを肩に乗せてあげて一緒に景色を見せてやってる。
俺の方は肩にミラを乗せて、足元にはラッキーがいる。
ほのぼのタイム。
地球の人間は何故かイルカを偶然海で見れると嬉しくなる。
しかしミレナはイルカには興味ないのかアメリカンドッグを一心不乱に食べていた。
……美味いらしいな。
しばし船と並走していたイルカだったが、急に止まって逆走を始めた。
「あれ?」
「来たぞ! 今度は魔物だ!」
腕に赤いリボンを巻く冒険者の護衛が叫んだ!
なに?
「なんの魔物だ!?」
「デビルオクトパス!!」
冒険者の説明によると巨大なタコだ!
「風魔法使い! 俺達弓使いが弓を放つから援護を!」
「はい!」
ここにも女性の風魔法使いが乗っていたが、なんか見覚えがあるな?
デジャブを感じた。
その瞬間! 弓を放つ前に一瞬視界が、眼の前が黒くなった。
「毒霧!」
しかし風の結界に守られて船はギリセーフ!
あれは巨大なタコがスミを吐いたかと思ったら毒の霧だったのか?!
あっぶね!
「第二射気をつけろ!」
「すみません、弓の援護前に結界の方に風魔法を使いました!」
「魔力は残っているか!?」
「すみません! 結界に全力使ってありません!」
ええ!?
俺は思わず神に祈りながら帳面を慌てて開く。
「神よ! 皆を守ってください!」
魔力を放つ事ができる杖をイメージして描き始めた。
5枚消費しますと警告文字が出たけど仕方ない!
巨大タコは幸い次の毒霧を吐くまでクールタイムがあるようだった、その代わり船に向かって触手を伸ばして来たが、護衛の冒険者から弓矢が雨のように放たれる。
俺は絵を描き上げて杖を手にし、次に冒険者が放つ矢に小さな竜巻のような魔力の追加効果を付与した!!
矢がドリルのように鋭く突き刺さり、タコの巨体を抉った!!
そして、タコは海面を赤と黒に染めて沈んでいった。
「……倒した?」
「撃退成功か?」
「やったか?」
冒険者達! やったかのフラグ立ては禁止!!
しかし、今回はちゃんと倒したみたいでタコはもう浮上して来なかった。
そして安堵しつつも帳面の残りページはおそらくもう10枚ぐらいだよなぁと俺は思った。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます