第103話 消費が多かった

 契約した別荘の中に入って見ると、いい感じの白い壁があったので、ここに扉か門を描いておけばあのアパートが取り壊されてもどうにかなると思う。


 俺は海神の帳面に描く前に、廊下のコンクリート打ちっぱなしの壁に扉を描くことにした。


 カナタはその間、動画やエロ同人誌のデータのアップロードを代理でしてくれた。


 そして壁に門の絵を描いている俺のもとにジュースとパンの差し入れを持ってきてくれたカナタが訊いてきた。



「翔太、あとこちらでやること何だっけ?」

「数日後に弁当の引き取り、ティッシュやケーキや下着を買い漁るなどかな。でもティッシュとかは嵩張るから俺の風呂敷タイプじゃないと入り口やや狭いからカバンタイプは辛いだろう」


「弁当は横幅があるタイプじゃなければ入るかも」

「いっそもう一枚海神の帳面で増やしてしまうかなぁ、カナタが移動可能だと判明したし」


「大丈夫? 貴重なページ減るけど」

「40枚綴りでまだ半分くらい残ってるし、亜空間収納系は絶対に無駄にはならんよ」


「それはそうだけど、有事の時に武器か魔法のようなものも出せるんでしょ?」

「い、一応ミラも戦えるし」


 俺は結局帳面で普通サイズの洗濯機も入るくらいの大きな風呂敷型の亜空間収納の布を描いて出した。


 そしてカナタにそれを預けた。


「貴重な品過ぎて緊張する」

「便利に活用してくれ」


「とりあえず通販の方も下着は注文してるけど、実店舗でも買うんだね?」

「ああ、あとレースや布地、美味しい食べ物も」

「野菜なんかは特殊なもの以外はあちらでも買ってあるよね?」

「ああ、卵もあちら産のがある、アヒルと鶏両方」


 カナタは俺の話を聞きつつスマホのメモ機能を使ってメモをしている。

 俺は最後の筆を入れた。


「よし、こんなもんかな」

「これで扉の絵は完成?」


 はたから見たらトリックアートみたいで、ついでに丸い覗き小窓を描いてつけている。



「ああ、神社の鳥居みたいなのにするかすごく悩んで結局扉の絵にしたよ」

「鳥居をやめたのはなんで?」

「なんか違うとこに通じたら怖いなって」

「ああ、それは確かになんとなく怖くなるよね」


 さて、今度は帳面の方に同じ扉を描いてみた。

 すると、なんと紙の上に赤い文字で注意書きが現れた。


【※注意!! この異世界への通路を欲するならば帳面の枚数は一度に十枚減ります。

 そして小窓に異世界の様子が映っている時だけ行き来可能となります。

 あちら側の大樹の魔力の多い時に利用可能】


 と、出た!!


 ゾクリと鳥肌が立ったが、これはどうしても必要なものだし、仕方ない!!

 残りページ全部使いますって言われなかっただけマシだと思う!!



「一度に十枚消費か、でも仕方ない! その価値はある!」

「え、大丈夫?」

「これは必要なんだ! よろしくお願いしまーっす!!」


 ビリビリビリビリッと俺は連続して十枚破った!!


 すると、壁の扉が一瞬眩く光った!!


「ひ、光ったね?」

「ああ、でもまだ小窓にあちらの風景が出てないからあちらの大樹の魔力が充電されてないっぽいな」

「やはり満月を待たないとだね」

「どうせこちらの買い付け作業が終わってないし、そこは問題ないな」


「あ、そうだ」

「なんだ?」

「いや、ここの洗濯機を借りていい?」

「ああ、もちろん」

「あちらでソーラーパワーの電気で小さい洗濯機回すのもったいなくてさ、タブレット端末の充電分がなくなると怖いし」


「あー、なんか電力でエリ◯サー症候群みたいになるよな、俺もちょっと分かるぞ」

「天気悪い時や夜は充電できないし、きっと冬になればもっと減ると思うとさ、ついね」



 ははは、ついつい貧乏性っぽくなるよな。


 俺がうんうんと頷いていると、カナタはなおも言葉を続けた。



「あと、ルルエはとてもかわいいけど、どこかに繋いで留めておくと盗まれたら嫌だなとか、少し心配になることあるから、僕は給料も貰ったし、折りたたみ自転車でも買おうかなって、自転車くらいならそこまでオーバーテクノロジーって感じしないし」


「確かに車やバイクに比べたらマシかもな」

「だからここの別荘地から出たらすぐ買える自転車屋さんをさがして見ようかなって」

「悪くないな、てか、俺も買おうかな。ミレナとジェラルドにも御土産にしてもいい気がする」

「いいと思うよ」



 俺とカナタだけ自転車に乗ってたら、ミレナが私には? って顔して見てきそうだしな。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る