第88話 新メンバーとお仕事
店の開店より先に、俺はルルエに乗って劇場にブロマイドやパンフを納品してきた。
「すごい、こいつは見たままの姿絵だ!」
ブロマイドは写真なので。
「素晴らしい魔道具のおかげですよ」
「ありがとうございます!」
「では、次回の公演も楽しみにしています!」
「はい! ありがとうございます!」
俺は劇場への納品も急いで終わせ、どうにか月に数日のみ開店する店の下準備も終わった。
* *
開店日の朝が来た。
朝から店の前に行列!!
口コミで他の領地からも人が、客が来たようだ。
大変だ。
整理券を念の為に作っていたから良かった。
もうじき秋とはいえ、ずっと夏空の下で行列を作らせてる訳にはいかなかったので。
俺は聖者探しの噂話もあったので、今回は少しでも顔を隠すためにサングラスを着用した。
今回はカナタもいて本当によかった。
雑貨屋はやはり大盛況だ。
ブレスレットをスピーカーモードにしてもらって今回も二階の様子を聞ききつつ仕事した。
「こちらのイヤリング、キラキラとても綺麗ね、ダイヤモンドかしら?」
どこぞのお嬢様の質問のようだ。
「クリスタルガラスです。ダイヤに引けを取らない美しさと輝きを放っていますが、ダイヤほどには高くないので普段使いにいかがでしょうか?」
「普段使い、そういう言葉もあるのねぇ、じゃあそれもいただくわ」
「ありがとうございます!」
カナタのセールストークはなかなかのものだ。
「貴方、新入りさんね? 二人お揃いのような服でとても可愛いわね、その服は何処にあるの?」
「はい、新入りです。それと申し訳ありません、これは店主が従業員用に用意してくれた服でして、非売品です。しかし、あちらの棚に似た雰囲気の花柄やチェックの生地がありまして、服をお抱えの針子さんや贔屓の衣装店にオーダーされてもよいかと」
「お客様、花柄の布地はこちらでございます」
タタッと軽快な足音がした。
ミレナがカナタのフォローで布を抱えてきたようだった。
「あら、本当に可愛い花柄ね!」
「お色違いはこちらになります。姉妹や仲の良いお友達とお揃いの色違いなどで着ると可愛いらしいですよ」
おっと、今度はミラまでセールストークをしている。
「お揃い! そうねぇ……仲の良い友達となら柄が被ってもわざとですと言えますわね」
「あら、そちらの柄素敵ね、迷われてるなら私が購入しても?」
「いいえ! こちらは私が買います!」
「あら、残念だわぁ」
「お客様、こちらの青い花柄はいかがですか? 上品でお客様にお似合いですよ!」
「あら、そちらも素敵ね」
「あの、ゴム……」
今度は言いにくそうな男性の声だ。
「あ、はい、装飾品の髪ゴムですか? それとも、夜の……」
ゴムの方はカナタが対応してくれてるっぽい。
「夜の方で」
「はい、箱は小、中、大とありますが」
「店で使うので大で、できるだけ沢山」
「申し訳ありません、大はお一人三個までとなっております」
「仕方ないな、じゃあ大を三個頼むわ」
「かしこまりました」
「すみません、私にも夜のゴムを、中を三個とか」
こちらもさっきとは違う男性の声だ。
「はい、中はまだ在庫ございます、三個で受けたまわりました」
「ねえ、客が入りきらないじゃないの、もう少し店を大きくできない? 春と秋ならいっそ野外で構わないから」
「申し訳ありません、そちらの方は店主と相談してみます」
「よろしくね」
なるほど、市場や野外コンサートのノリなら、広く使えるな。
横に長い屋根のある設備くらいなら、なんとか建てられるだろう。
一方カフェの方も整理券を貰って時間が来るのを待つ人もいるから大賑わいだ。
大量のお弁当があって本当に良かった。
プルルンチェの作り置きも沢山しておいたし。
魔法の風呂敷様々だぜ!!
「あら、このワッフルというもの、見た目が可愛いわね」
「はい、ペリーとアイスも添えて可愛くて美味しいですよ」
俺は厨房からメニューを見ていたお客様の声に答えた。
メニューはパソコンとプリンターを使ってプリントし、さらにラミネート加工をしたものだ。
ちなみにワッフルは業務用スーパーでまとめ買いをしておいたやつな。
それにファミリーサイズのボックスアイスからアイスクリームディッシャーで半円形にくり抜いてワッフルに添える。
「この弁当、美味いな! 持ち帰る分も買えるだろうか?」
「最大三つまでならと聞いております」
「じゃあ、友人のお土産に三つ」
「四番テーブル、チキン南蛮弁当三つお持ち帰りで!」
「はい! 四番テーブル南蛮三つ! かしこまり!」
俺はジェラルドの受けた注文に勢いよく返事した。
「こちらにメロンクリームソーダを」
「かしこまりました」
「このテーブルに限定ケーキを三個」
「かしこまりました」
「わたくしにワッフルを」
「はい!」
「こちらのテーブルに焼き肉弁当を三つ」
「はい! 焼き肉弁当三つ!」
やはり初日は目が回りそうなほど忙しかった!
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