第57話 【ミレナ視点】 タラサの夜に
* * 【ミレナ視点】 * *
私の名前はミレナ。
美しく長い髪の狐族の獣人の美女!
狐族の女性には多いけど、例に漏れず、私も異性にはとてもモテるわ、可愛くて綺麗だから!
道行く多くの雄は私見て振り返るほどよ。
最近気になる人族の男がいて、結構サービスしてるのに、まだ求婚をしてこない!
この私があんなに恥ずかしい金ピカの水着まで着てやったというのに……好みだって言ってたじゃないのよ!
あんなの誘惑と同じなのにまさかの効果なし?
あの男ったら、お人好しで赤の他人の老婆にもせっかく獲った魚もあげるし、親兄弟でもない友人の為に眠り草を集めたり、本当に変な男。
最初にたまたま出会った時も、誰にでも優しいなら壁にハマって動けない私を助けても、運命的なものも感じないのかしら?
普通なら恩人だと恩にきせて、男なら言いよってくるものなのに。
いや、あれは罠とかじゃなくて本当に困っていたんだけど、あのエルフのせいで自作自演でも疑っているのかしら? あれは正直ちゃんと私だって感謝はしてたんだけど……。
──別に珍しい食べ物や物だけに惹かれてる訳じゃない。
ふにゃふにゃしてえちちな絵を描いて売るような変な男だし、魚は捌けるけど動物だと怖がるし、異世界人だし、でも、ろくに戦闘力もないあの男が放っておけないのよ。
弱いくせに……お人好しだからいつどんな危険にさらされるか分からない。
私が、守ってあげないと……頼りないし。
今回はあいつが行くって言うから私も海底都市に旅行に来た。
入り口の海龍の口のとこで噛まれはしないかとショータはビビっていたわ。
なんかやましいことでもあったの? ちょっとウケたわ。
海底都市は周りが海で不思議で綺麗だった。
このタラサの旅行でなんとか進展させたい。
なんとかならないかと、せっかく三部屋取れたホテルの夜に、こっそり夜這いに行ってみれば、ショータは部屋にいないようだった。
海底都市内の前回はエルフと同室でどうにもできずだったし。
そもそもドールのミラもあちらの部屋にいるし、何らかの対策はいるかもしれないけど。
私は仕方なくホテルから出て来た。
あてもないのに。
ところで……あいつ部屋にいなかったけど、もしかして花街に行った!?
つまり、花街の女を買って抱くつもりなのかしら?
もー! 腹立つ! お酒でも飲もう!
私の足は自然に酒場に向かった。
賑わっている。
流石にリゾート地の酒場だわ。
ちょうど近くに来たウエイトレスに声をかける。
「ねぇ、強いお酒とツマミを適当にちょうだい」
「かしこまり!」
喉が焼けそうな強いお酒を飲んだ。
美味しくは無い。
ツマミに出て来た燻製肉に齧り付く。
……硬いわね!
「あーあ、どうして上手くいかないのかしら……」
そうやってヒトリ侘びしく飲んでいたら、
「お、ミレナじゃないか!」
「なんだ、カイじゃないの、またあんたなの」
「だいぶん強い酒を飲んでるみたいだな? さてはあのショータさんと上手くいってないんだろ?」
「うざいわね、なんであんたにそんな事を話さないといけないのよ」
「あの人は諦めて俺にしとけばいいじゃん」
「嫌よ、なんでよりによってあんたなんかを」
「ひでーな! こんなに男前なのに」
「もう顔だけの男は信用しないの、私は!」
「尻尾もこんなに毛艶もいいし、ふさふさだぞ」
「そんなの私の方が綺麗だし」
「えー、どんな手入れをしてるんだ?」
「ショータの仕入れてくる石鹸とかシャンプーとか」
「ほう、確かに綺麗だ。詳しく聞かせてくれ」
「もー、面倒くさいわね、せっかく飲んでるのに」
「いいじゃないか、酒のツマミに雑談くらい」
やけになって酒場で飲んでたらまたカイと偶然会ってしまってウザかったから、私は切り上げて部屋に戻った。
強い酒を飲んだし、私はベッドに倒れ込むようにして眠った。
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