第50話 海神の夢
夜に不思議な夢を見た。
ポセイドンに似た容貌の海の神様がおそらくは俺の奉納したシャイ◯マスカットを「これは美味しい! 皮ごと食べられるとは!」
などと言っておおいに喜んでいたし、
「曲の奉納もよかったぞ、目が覚めたら枕元の返礼品を受け取るといい」
と、おっしゃっておられた。
つまり水場でミラの足を浸けて魔力回復を図っていた時にBGM代わりに流していた、あのMP3のハープ奏者の曲も気に入ったという解釈でいいのかな。
なんにせよここの神様がゴキゲンのようでよかった!
この調子なら帰りも海龍の口に噛まれることはなさそうだ。
セクシーな踊り子衣装とかを買ったりしたけれど。
朝から夢から目が覚めたら本当に枕元に贈り物らしきものがあった!
それは筆と縦長の帳面のようなもの。
製本は穴に黒い紐を通して結んであるタイプ。
時代劇で丁稚や商人が持っていそうなやつで、ここは西洋ファンタジー風の異世界だと思っていたのに何故かこの道具は和風だ。
帳面の表紙をめくると、呪符作成用と書いてある。
火や水や突風などの言葉や絵をこの筆で書いて一枚だけ使用分を破るとその現象が起こるらしい!
凄い!!
しかも墨汁やインクのようなものは筆を紙につけたとたん現れる魔法がかかっている為に不要とある!
かなり凄いものをいただいた!
張り込んでシャイ◯マスカットを捧げたかいがあった!!
「大変だ、ジェラルド! 凄いものを海神様からいただいた!」
「はぁ?」
「ほら、この帳面!」
「冗談だろ?」
「本当だって! あ、そうだ、何か書いてみよう」
ふと、棚の上に洗顔用の桶のようなものが見えた。
まだ水などは入っていない。
俺は帳面にお湯と書いて一枚破って、桶に入れたら桶いっぱいのお湯が出現した!
「おお! 出た! ほんとに出たぞ!」
「マスターおめでとうございます」
いつの間にかベッドの脇で寝ていたミラも起きていた。
「ありがとうミラ!」
「本当に凄いな! でもそれはいちいち紙を破って使うなら貴重な一枚をお湯ごときで無駄にしたのでは?」
!!
「ま、しかしあれだよ! お試しは危険度の少ない分かりやすいもので一回はやる必要あるから!」
「まあ、ショータがそれでいいならいいが」
「あ、そうだ、ミレナには次に使うまでビックリさせたいから秘密な」
「ああ」
「とりあえずこれで顔を洗おう」
「そうだな」
俺は早速このお湯で顔を洗った。
「ジェラルドどうかな? 俺の顔、急にイケメン、すんごい美形になってたりしないかな?」
「さっぱりはしたようだが、特にいつもと変わらないぞ」
「あ、そうか、神様のお湯なら、何か特殊効果あるかと思った」
「それなら美しくなる水とか書く必要があるのでは?」
「なるほど!」
「マスターは元から男前ですよ」
「そんな事を言ってくれるのはミラくらいだよ、ありがとう!」
今日はミラにドレスを着せてお出かけだ。
とりあえずトートバッグに入ってて貰うけど。
ミレナには特に何も無かったふりをして、宿を出た。
「ショータ、なんか機嫌がよさそうね? 何かいいことあった?」
「や、宿が綺麗だったからさ! ほら、そこの藤の花っぽいやつの前で記念撮影しようぜ!」
「ふーん、確かにこの蔓性の花はキレイだからいいけど」
ミラはトートバッグの中で静かにしていたので、そっと出して、一緒に宿と記念撮影をした。
朝の公園にて朝食の支度をすることになった。
先日買ったキンメダイが早く食べたかったので!
キャンプセットを設置し、朝食のおにぎりとアオサの味噌汁と刻み生姜を乗せたキンメダイの煮付けを作って食べた。
「やはりキンメダイは美味いな! お安く買えてよかった!」
「甘辛の汁のやつが美味いな」
「塩焼きも、今回の、この煮たのも美味しいわね」
「塩おにぎりはおかわりあるからな」
ジェラルドが塩おにぎりを食べきった後で、
「辛いのはないのか?」
「えーと、高菜と明太子なら」
「えーと、野菜のやつ」
「はい高菜おにぎり」
「ありがとう」
「ねー、ショータ、次の観光プランは? 何かあるの?」
「宿の壁にポスターがあったぞ、歌と演劇が見れるところがあるんだって、芸術鑑賞もよくないか?」
「劇場もいいが夜には願いを込めてランタンを飛ばす祭りがあるらしいぞ」
「それはキレイだろうけどドームの天井にランタンはぶち当たるんじゃないの?」
「後でランタンは巨大な空飛ぶクジラが回収する」
「ファンタスティック! それは楽しみだ!」
映えるだろうな。
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