第12話 カレーとプリンと伯爵領の事件
精霊祭の翌日。
ジェラルドの木の家へ戻ってからの食事。
朝食はベーコンエッグとパンというメニューで簡単に済ませたが、昼はいよいよカレーを作る!
そう思い立ってワイルドボアの肉と玉ねぎと人参でカレーを作る!
ナンやパンでなく米で食うカレーだ!
米を炊いて準備し、カレーの方は二種の違うメーカーのルゥを使う。
多分いい味がでる!
肉と野菜をぶち込んでカレーを作った!
せっかくだし、木の家の眼の前の庭部分にテーブルセットを置いて、そこで食事をする事にした。
カレーの美味しそうな香りが周囲に漂う。
ランチョンマットにカレーライスの皿を置いて、まるで森の中のオープンカフェのようになった。
そして、ワイルドボアの肉を使ったカレーをパクリ。
おっ!!
さすが日本のカレーは異世界の肉で作っても美味い!
ジェラルドにも好評だった。
「やや辛いけどなんとも癖になる味だな。
俺にこの味を教えてくれてありがとうな、ショータ」
「そ、そんなしみじみ言われると照れるな!」
「明日もこれが食えるのか?」
「カレーはあるよ、まだ残りが。それにこれから食後のデザートにプリンもある」
「プリン?」
俺はクーラーボックスからプリンを取り出し、ジェラルドと三つ入りのプリンを一個ずつ分けて食べた。
あー、最高! 美味い!
このプリンを作った企業にノーベル平和賞をあげたい! あげてほしい!
「つるんとしてて甘くて、とても美味しいな」
「そうだろ!」
「何か……嗅いだことのない香りが」
突如として庭の前に現れたのは狐の獣人!
「ま、また壁尻の狐っ娘が!」
「なんで匂いに惹かれて来るんだろうな、この小娘は、いつも腹が減ってるのか?」
「壁尻とか小娘とか言うなし!」
「ごめん、君の名前を俺は知らないし」
「いい加減聞けや!」
狐っ娘が吠えた。
この子はサークル、いやパーティークラッシャーらしく顔はすごくかわいいのだが、ジェラルドの美貌を見てると、わりとその辺にいるレベルでは? と思ってしまう。
エルフの美貌を見てるとこのような弊害が。
「女の子の個人情報は慎重にしなくていいのか?」
「私の名前はミレナよ! 壁尻とか小娘とか言われるより名前を知られた方がましよ!」
この世界の女の子は個人情報を慎重に扱う気はないらしい。
「ミレナちゃんか、ところで何をしにここへ?」
「え、えっと、あ、貴方達に重要な金儲けの話をしに来てあげたわ!」
えっとって言ったな?
今、無理矢理思いついたみたいな。
しかし狐の恩返しか?
美味しい匂いに釣られた訳ではなく?
とりあえず俺は詳しい訊いてみることにした。
「金儲けって?」
「傭兵の仕事よ! 伯爵様が冒険者とかを沢山集めてるの」
「なんで? まさか戦争?」
「オーク達がこの伯爵領の端っこにあるラビ族の村に襲撃に来たんだって!」
「ラビ族といえば、さっきのカレーにも入ってる美味しい人参の産地だな。まさかラビ族が全滅などしてないよな?」
ジェラルドが真剣な顔で問うた。
「ラビ族は逃げ足が早いから全滅はしてないわ。ただ土地がオークに奪われたら大変でしょ」
「ジェラルドはともかく、俺は戦闘では無能なんだが」
「うーん、あそこの野菜には世話になってるんだよな」
「行くのかジェラルド!? オークの出る危険な戦場へ!? ゴブリンより絶対強い奴らなんだろ!?」
俺は自分で持ってるファンタジー知識で言った。
「それはそうなんだが、あの村は見捨てられないな」
「ジェラルドが行くなら俺も……こ、後方支援でもお金貰えるかな?」
「後方支援? 人間の貴方、治癒魔法でも使えるの?」
それが使えればよかったけどね!
俺は少し恥じ入りながら言った。
「いや、戦闘に出る皆さんの食事の用意とか……」
「それじゃたいしたお金は出ないわよ」
俺を見て半眼になるミレナ。
よせ、そんな呆れた目で見るな、俺だってチートな魔法とか欲しかったぞ!
せめて現代知識や武器で無双できたら!
何とかして地球に戻って銃を手に入れる?
いや、しかし、銃刀法違反だしなぁ。
一般の日本人でも手にできるとしたら猟師の銃。
でもそれも試験に受かって、審査を通ってからだし、時間がかかる!
それじゃ花火の火薬をあつめて爆弾を作る!?
いや、花火を作った人は、人の目を楽しませる為に作った訳で、戦いとかの道具ではなく!
あー!
犯罪っぽいやつはやはり、俺の中の良識がまだ邪魔する!
人助けであっても!
武器の扱いは慎重に!
俺は平和を好む日本人!
そして俺が脳内で思考を巡らせていると、ジェラルドがまた口を開いた。
「ただ、オークの数が多くてやっかいならば、伯爵が騎士をも動員してる可能性がある。
その場合は貴族が指揮に来て、貴族相手なら気に入られたら金貨をほいっとくれる可能性も」
「金貨!
金貨が三枚あれば例の亜空間収納の魔法の鞄が買える可能性が!」
金貨と聞き、突如として物欲が膨れ上がる俺。
「ねえ、人間の貴方、まだ貴族に気に入られるような美味しいものを隠し持ってるの?」
ミレナが獲物を狙う目で俺達の手もとの食いかけのプリンを凝視してる。
しかしプリンはもう半分以上ない。
俺とジェラルドは残りのプリンをささっと口に入れた。
「ああっ! 謎の食べ物が!」
ミレナが悲鳴を上げる。
食いかけでも食べたかったようだ。
俺は僅かな慈悲を施すつもりで言った。
「カレーならまだある、ミレナちゃんも食べるか?」
プリンの残り一つは貴族に会えるのにかけて、カレーで我慢して貰おう。
プリンは後でジェラルドの手持ちの魔法の鞄の空間内が時間停止らしいから預けておこう。
「た、食べる! さっきの不思議な香りのやつ!」
食べるらしい。
どうも好奇心旺盛な狐っ娘だな。
美味しいものに目がないのかもしれない。
あるいはバニラアイスがそれほど衝撃だったか。
「うんま! 何これ美味しい! 少し辛いけど!」
カレーは狐っ娘にも好評だった。
流石カレー様だ。
異世界でも通用する味だ!
カレーを食べ終え、ぷっちんできるプリンが入ってた容器を見てるミレナ。
甘味を逃してやや悔しそうだが、俺は今、金に目が眩んでる。
すまんな! 魔法の鞄が俺も欲しいから!
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