【第一部完結】夢占の少女と光を統べる金の竜
羽鳥(眞城白歌)
Prologue.
序.砂の世界で
広やかな草原を渡る風が、足元の草葉をさざめかせて通り過ぎる。
顔をあげ地平線のかなたへ視線を向ければ、緑を侵蝕する砂色が見えた。いずれこの草原も、迫りくる砂に呑み込まれるだろう。
あの日から、世界のありさまは大きく変わった。
そう遠くない未来に、世界は水を失い、乾いた風が運ぶ砂に覆われてゆくだろう。――そう、友が告げた予測を胸に巡らせる。
「難しいことは、わたしにはわからないわ」
世界を
「あなたは、何ひとつ告げずに……
そっと囁いたことばに、けれど非難の色はなかった。悲劇の夜をこえ、深く傷ついて悩み抜き、その果てに見出したのはひとつの約束。永遠の愛を誓ったことばが、嘘ではないと。遠い未来のいつか、必ずふたたび会える――と。
彼がどんな形を想定してそれを告げたのか、彼女にはわからない。それでも、彼はこれまで一度だって偽りを語らなかった。だから信じようと思うのだ。
彼の約束が悲劇を
「あなたは、わたしに愛をくれたから。わたしはあなたを待つ間……あなたのかわりに、世界を見守るわ」
かつての、虚無だった日々を思い出す。孤独と不遇に凍りついた心を温め、美しい世界を見せてくれたのは、彼だった。
未来を前に怯えて立ちすくむだけだった彼女の手を取り、広い場所へ連れ出してくれたひと。彼と出会わなければ、この心に恋が芽吹くことなど一生涯なかっただろう。
もはやあの頃の、何も知らない
愛されること、愛すること。自身の価値も、世界の美しさも、ひとは愛おしい存在だということも――彼の愛をとおして知ったのだから。
胸の前に両手を組み合わせ、
彼の
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