第15話 そんな男
ここは正直に「同士」であるおふたりにペイトン様の浮気遍歴を話すべき?
いや、話さないほうがペイトン様の名誉のために良い?
そんな男と恋仲のアドニス様の名誉も傷ついちゃう?
クリス殿下もそんな男にアドニス様を取られたと知れば嫌な気分になるのでは…
一瞬でいろいろ考えて躊躇った。
そして結論は出ず。
薄笑いを浮かべたまま、わたしは固まった。
わたしが知る限り、去年からペイトン様の浮気は続いている。
去年の今ごろは取っ替え引っ替えで、決まったお相手はいなかった。
結局、わたしが王都にいた3か月間はずっとそんな状態だった。
そんなペイトン様が他の女性とデートをされているのを偶然に目撃して尾行して、長い長いキスシーンを見るハメになって…
おふたりがじっとわたしを見てこられる。無言の圧力に耐えられなかった。
「ペイトン様の浮気現場を尾行してたら、それはそれは長いキスの場面を目撃しまして…」
消え入りそうな声で説明をする。
おふたりはやっぱりという空気感だ。
「ペイトン殿はシャンディとの婚約時にはすでにお相手がいたのか…」
なぜか、クリス殿下もキール様も気落ちしている。
「だから、いま好きになってもらうためにがんばっているんですよ」
なんか必死になって、声を張り上げる。
「シャンディも大変だな」
キール様がポンとわたしの肩を叩かれる。
無理に作った微笑みを返したんだけど、クリス殿下だけはずっと黙ったままだった。
「そういえば、学園で壁ドンが流行っているんですよ」
少し嫌な空気になっていたので、キール様が学園の話を急に持ち出し、話題を変えてくれた。
「へっ?王立学園って規律が厳しいと思っていたんですけど、壁ドンが流行るなんてそうでもないんですか?」
「婚約者同士で学園に入学している方も多いので、みんな楽しそうに恋愛をしていますね」
キール様が羨ましそうに言う。
「そういえばシャンディは貴族でも中位以上なのに、なぜ王立学園に入学していないの?」
クリス殿下がようやく気持ちを切り替えたのか、会話に入ってこられた。
それは……
「辺境伯領地はいつ隣国と戦争が起きるかわからないので、あまり領地から離れられません。特にわたしはひとり娘で跡取りですので王立学園には行きたかったのですが領地に残ることを選びました。婿に来てくださる方が王立学園で人脈を広げ、とにかく強ければ、それでうちは問題はないんです。わたしは隣国の情勢や国境の守備、戦い方など辺境伯としての独自の勉強があり、そちらに重きを置いています」
ふたりが神妙な面持ちで聞いてくださる。
「だからと言って、わたしを気の毒だとか思わないでくださいね。領地独自の少し変わった教育方針の学校ですが、ちゃんと学校に行っているので学校生活は楽しんでいますよ」
「それを聞いて安心した。領地独自の教育方針の学校っていうのは、興味があるな」
「ぜひ、留学にいらしてください。クリスもキールも大歓迎ですよ」
わたしはこの「同士」との楽しい学校生活は安易に想像できた。
そのあとは他愛もない会話をして、お互いに婚約者をデートに誘うことを約束して、お開きとなった。
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