第6話 オールドのマーチン

 賢介と沙織は、老人に導かれ、1キロ程離れた、老人のお洒落な洋館にたどり着いた。

時間は、17時を回っていた。

老人が中に「おーい、お客さんだ」と声をかけると、中から、知的とも取れる、背筋のシャッキリしたご婦人が迎え出た。

ご婦人は、「まあ、珍しい!さあ、上がって、そこのタオルで、汗お拭きになったら?」

と暖かく迎えてくれた。

老人は、「ほれ!大漁じゃ、この方達の山にも、入ってしまったがな!キノコのオコワでも頼む」そう言って戦利品であるキノコを渡した。

老人は、「こっちじゃ」と二人をリビングに案内した。

二人がリビングに入って真っ先に目がいったのが〝蓄音機〟であった。また、その背後を埋め尽くす大量のアナログレコードであった。

賢介は「凄い!音楽お好きなんですか?」と聞いた。

老人は「まあな」とだけ、答え、奥の自分の席に座った。まあ掛けなさいと横のソファを手で示す。

やや、しばらくして、ご婦人が「コーヒーと紅茶どちらがよろしい?」と飲み物を気遣ってくれた。

二人ともコーヒーをお願いした。

コーヒーが3杯届いてから、老人のキノコの話しが始まった。

沙織は熱心に聞いていたが、賢介が気になるのは、

アナログレコードであった。

キノコの話しが一段落したところ、ご婦人がキノコのオコワ、天ぷら、お吸い物を持ってきてくれ、

夕飯が始まった。

暫く、皆、キノコを堪能した。

老人は「さて、君は音楽好きかな?」と賢介に聞いてきた。「いや、髪型から言ってのことじゃが」と付け加える。

賢介は、「大好きです、歳も歳ですが、夢追っかけてます」と答えた。

老人は、「そうか、ギターは弾けるかね?なんかワシに聞かせてくれんか?」そう言って壁に立てかけてあるギターケースを賢介に渡した。

賢介が、ケースを開けるとそこには、オールドらしき、マーチンのD18が入っていた。

賢介は、「いいんですか?こんな高価なもの触って?」と聞いた。

老人は「かまわん、鳴らしてやってくれ」と伝えた

続けて「明るい、ミドルテンポの曲が聴きたい」

という言葉に困惑したが、オリジナル曲を披露した。

曲が終わると三人から拍手を浴びた。

老人は「次は悲しいバラードが聴きたいのう」とリクエストする。

こんな調子で1時間余り、老人のリクエストに答える事となった。


余りに遅い時間になり、泊まる事を強く勧められた

山道を歩くのも、運転も危険だからである。

二人は、ゲストルームに案内され、床についた。


翌朝


帰り際に老人から〝名刺〟を渡される。

水曜日にオフィスに来なさいとのことだった。

名刺には、〝ソッチーレコード 代表取締役   加藤 一〟と書いてあった。

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