死力戦

八つの頭になった水の竜がルビーに襲い掛かる!


「無駄よ。私はただ紅き蝶を前に飛ばすだけでいいのだから」


ヒラヒラッと紅蓮蝶が水の竜の前に飛んでいった。


ドオォォォォォン!!!

ドオォォォォォン!!!


水の竜の頭が吹き飛んだ。

しかしマリンは動揺していなかった。


『妙ね。どうして自分の魔法が破られて平然としていられるの?』


注意深く見守っていたルビー違和感を覚えた。

そして、今まで手ぶらだった手に、内ポケットから小さな杖を取り出すと目の前で振った。


バシュッと『地面』から飛び出してきた水の刺を防いだ。


バッと後ろに飛び去るルビー。


「チッ、勘のいいこと。いえ、戦闘経験が豊富なおかげかしら?」


ルビーの頬に嫌な汗が流れた。ただの杖に水の刺が防げる訳もなく、杖から炎が揺れていた。この炎が水の刺を防いだのだ。しかし、本当に直感だった。


油断せず相手を観察していたからこそ防げた一撃だった。


「まさか水の竜が囮だったなんてね」


マリンの目的は違和感がないように、ルビーに水の竜を破壊させ、地面を水浸しにするのが目的だったのだ。


「フフフッ、さぁ!これからですよ!」


マリンは地面の水を使いどんどんと水の刺を発生させルビーを襲わせた。


ルビーは炎の杖を使いながら華麗に避けてゆく。


「私ばかり追って大丈夫かしら?」


!?


気付くと紅蓮蝶がマリンの側にやってきていた。

ドカンッとマリンの側で爆発した。


「がっ!?」


直撃はしないものの爆風で吹き飛ばされた。

しかし、すぐに受け身をとり起き上がった。そして、マリンの周囲には紅蓮蝶が複数匹飛んでいた。


「いつの間に…………」


ルビーの攻撃もしつつ水の魔法で紅蓮蝶を破壊していくが、どうしても注意力が散漫となり、いつの間にか防戦一方になっていた。


『ハァハァ、自分の身を守るので精一杯だわ。攻撃するスキがない』


マリンは諦めていなかった。

魔力はまだある。体力もある。どこかで一撃を!


周囲を見渡しながら紅蓮蝶をしのいでいく。

そして、一気に自分の周囲に水の壁を空高くまで発生させ、全ての紅蓮蝶を誘爆させた。


「まだこんな力を!?」


並の一年生ならすでに、魔力欠乏を起こしていてもおかしくないのにと、想像以上の魔力にルビーも驚きの声を上げた。


水飛沫が起こる中、二人はすでに次の魔法を放とうとしていた。


『本当の奥の手を使う事になるなんて。でも!勝つのは私よ!』


「全ての魔力を込めて!ハイドロキャノン!」


マリンの突き出したレイピアの先から圧縮された水が放出された。



「燃えなさい!クイーンフレイム・バタフライ!」


10メートルはある炎でできた紅蓮蝶がルビーの杖から出現し、翼を広げて業火を放った!


お互いの魔法がぶつかりある!

炎と水のぶつかり合いで、水蒸気が発生しお互いに押されないと踏ん張っていた。


「ぐ、グググッ!」


『おかしい!?私の方が魔力量が多いのに押されている!?』


踏ん張っているルビーは僅かに押されている感覚があった。


「ハァハァ、随分と苦しそうね。私の奥の手を使っているのですもの。貴女に勝ち目はないわよ!」


「奥の手!?」


マリンの勝ち誇った顔を見てルビーは歯を噛み締めるのだった。




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