林檎は世界を救う

からす

あらすじ的な何か

物語が好きな主人公A(16歳 〇✕県△△市)。

ありとあらゆる「物語」が大好物。

歌、伝奇、フィクション、全てがその範疇。

そんなAは、ある口癖を持っている。

それは「林檎は世界を変える」だ。

『転〇林檎』、『ニ〇ートン』、『ア〇ムと〇ヴ』、『白〇姫』、「異世界物で主人公が八百屋の林檎を拾うシーン」など、古今東西様々な作品で林檎が出てくるシーンは、その後何かしらの大きな展開を迎える。

つまり、「林檎は世界を変える」のだ。

そんなことを考えながら歩いていたAはとある夏祭りの帰り道、大型トラックに引かれて異世界に転生する。

最期にみた光景は、屋台で買って来たりんご飴が地面に落ちて割れるところだった。


そんなこんなで目を覚ましたAは、草原に居ることに気づく。

「ついに俺にも異世界ライフが…!!」

そこに女神が現れ、こう告げる。

「あなたはまだ死んでいません。ですが魂が離れかけているのでここにきてしまったのです。しかし、あなたの運命はまだ終わっていない。早く帰りなさい」

そう告げられ、ショックを受ける。

どうにかできないかと周囲を見ると、そこには大きな木があった。

しかも、よく見るとそれは林檎の木のようだ。

「…もしかして?」

そう思ったAは、女神が視線を外した瞬間を狙いどうにか林檎を奪取。

そのままかじりついた瞬間、意識が朦朧としていくのだった。



再び目を覚ますと、そこには白い天井と白いカーテンがあった。

「…病院、かな」

持ち前の理解の速さで状況を理解するA。

異世界転生できなかったことに少々落胆しつつも、死ななかったことに安堵する。

「それにしても、さっきのは夢だったのかな?女神さまの目を盗んで林檎を食べるなんて…」

先ほどのものが夢だというなら、あれは自分の願望が形になったものなのだろうか?

確かに林檎は好きだが、あそこまでだったのか…

自分自身に困惑するA。

しかし、その数秒後には人生で一番といっていいほどの驚愕と愉悦が彼を襲う。

というのも、入って来た看護師の頭の上に「カルマ:-0.7(微善)」と表示されているのだ。

それを見た瞬間、彼は「キタァアアアア!!」と叫びたいのを必死に我慢した。

なんせ、これは彼がいままで待ち望んでいた「物語の転換点」なのだから。


3か月程の入院を余儀なくされた主人公。

しかし当然大人しくしているはずもなく、激痛に耐えながら病院内を歩き回る。

そんなことをしていたある日、頭上に「カルマ:0.8(悪)」と表示されている男を見つける。

それと同時に、昨日見たテレビを思い出す。

『〇✕件□□村の□□小学校に昨日、30代前後の男一人が侵入し児童5名と教師数名を切り付けるという事件が発生しました。その後逃走したとして警察が捜索しております。皆さまお気を付けください。また、児童の保護者は学校側にその責任を…』


追跡➡バレる➡殺される直前にスキルが発動➡犯人が自首する


という出来事があった。

その後、なんやかんやで普通に学校生活を送りつつそこでも同じようにヤバそうなヤツを見つけては自首させていく。

しかしある日、「カルマ値57.6(邪悪)」と書かれた男を発見する。

いつものようにその男を自首させようと近づくと、その男がいきなり持っていたナイフで自分を刺して自殺した。

後日知ったことだが、どうやらその男は数年前に大事件を起こして数百人の人間を殺害した大量殺人犯である「梶間雄太かじまゆうた」だったようだ。

目の前で人が自殺するという非現実的な状況を目の当たりにし、しばらくの間寝込むようになる。

そうして数日が経ち、自分の部屋から出てきたAは、まるで別人のようにやせ細り、人間とは思えない表情をしていた。


それからのAは、今まで以上に積極的にカルマが+の人間に近づいていくようになった。

それも、特にカルマ値が大きい者を優先して。

沢山の人間が自殺し、時には何日も神に懺悔を捧げながらその場で蹲って死んでいく。

そんな気の狂うような状況を最も近くで見ながら、それでもAは笑っていた。

その頃から彼は「林檎が世界を救う」と呟くようになった。

そうして数年後。

新興宗教【林檎神協】が立ち上がった。

その宗教では、「林檎が世界を救う」という言葉を誰しもが呟いていたのだとか。

しかし更にその数年後、いつものように祈りを捧げていた時に一人の男に最後から刺され、教祖はあっけなく死亡した。


教祖の死後、警察がその宗教内部を捜索したところ、

【20××年 〇月 ✕日 僕は女神さまに会った】

から始まる日記が、殺される前日までびっしりと書かれていた。

その中でも特に奇妙だったのが、そう。

数年前、梶間雄太が道端で死亡しているのを確認したあの日の前日。

つまり、梶間雄太の死亡日、それも死亡時刻の数十分後に書かれているものだ。

以下がその全文になる。




【20××年 〇月 ✕日 あの男が死んだ。ごめんなさい。僕がやった。女神さまの力だ。林檎の。祟り。ごめんなさい女神さま。林檎。僕。めがみさま。かみさま。林檎。りんご。りんご。ごめんなさい。たたり。りんご。りんご。ごめんなさい。りんご。りんごりんごリンゴリンゴごめんなさいリンゴリンゴリンゴリンゴリン■■■■■■ゴ■■■■ンゴ■■■■■■■■■■■■■■■■かみさま■■■■■■■■■■ごめんなさい僕リンゴリン■■■■■ごめんなさい■■■なさいごめ■なさいリンゴかみさまリン■■■■■■■■■■ゴかみさまリンゴリンゴリ■■かみさま■■■■■■■■■■かみさま■■■■■■■■■かみさま■■■■ごめんなさいリンゴ■■■■■■■■■リンゴ■■■な■いリンゴリンゴリンゴ■■■■■ぼくリンゴリンゴごめん■■いリンゴかみさまリンゴリン■■■■■■■■■リンゴ■■ゴご■んなさい■■■■■■■■■■■ンゴかみさま■■■■■■ごめんなさいリンゴリンゴわたしがやりましたリ■■かみさま■■■■■■■リンゴリンゴ■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■リンゴ■■ゴ■■■■■■■■■■■■■■私は■■■■■■■かみさま■■■■■。

                              ■■■■■■                                                                                                                                ■■■■■■                                                                

                                        

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