第27話
【ふん、その程度でわれを攻撃できたと思うか?浅はかな】
ダメ?効かなかったの?
【茶番は、ここまでだ。そろそろとどめを……グゥッ】
イシュールの動きが止まる。
胸に刺さった剣が強く光りだす。
そしてその光が、イシュールをおおいつくした。
【グ……グハァッ!!】
イシュールの姿が。
骸骨の姿を形作っていた骨が、バラバラになっていく。
ひとつ、またひとつと崩れ落ち……とうとう、骨の山となってしまった。
【こ、こんなこ、とで。われは……あき、らめるわれで、はな……】
「往生際が悪いね」
今まで一度も聞いたことがない声が聞こえた。
「だ、れ?」
「その
「回収?」
「そうさ。こんなものがここにあっても邪魔だろう?処理するにしても不可侵条約のために、ポロアスには手出しができないからね」
祖神ポロアス様を呼び捨てにするこの人って……。
姿が見えないけれど、いったい何者なの?
「ヤービン。遅いではないか!」
「しかたないだろ?ポロアス。ここまでどのくらい離れていると思ってるんだよ」
「裂け目を通れば近道であったろうに」
「そうしたかったけど、イシュールのやつが結構厄介な結界を作ってて通れなかったんだ。あっちの入口をこいつが戻って来られないよう、軽く封じてもいたけどね」
「まあよい。さっさとそれを回収してくれ」
「了解」
「さて、回収するか」
そう声がしたかと思うと、空中に
両手で包めるほどの大きさの玉があらわれた。
玉がすうっと骨の山に近づく。
そして山に触れた瞬間、一瞬にして骨のすべてを吸収してしまった。
ただのひとかけらも残さずに。
「あ、の。それはどうされるのですか?」
「これ?もちろん封印するよ、未来永劫ね」
「消滅とか、させないんですか?」
「そんな優しいことするわけないじゃない?君たちにこれほどまでに迷惑をかけたんだからね。浄化の光にさらされ続けるのさ……永遠に苦しみながらね。それでいいだろう?ポロアス」
「まあ、よかろう。消滅させられた方が、ずっとラクだからな。ヤービンも相変わらずだ」
「じゃあ、ぼくは裂け目を通って帰らせてもらうよ。……着いたら連絡するから。そのあと両方の入口を同時に封印しよう」
「うむ」
じゃあね、という言葉を残し、球も見えなくなった。
今のは、チキュウがある星域の祖神なのね。
ヤービン様ってお名前だったけれど……ポロアス様とは雰囲気が全然違うんだ。
ぼうっとしていた私は、次の瞬間、一番大切なことを思い出した。
「あ!ユウリ。ユウリはどこ?」
私の代わりに刺されたユウリ……お願い、無事でいて!
きょろきょろと周りを見ると、向こうのほうに人だかりが見えた。
よく見ると、そのうちのひとりはお父様のようだった。
(お父様がいるなら、、きっとユウリもあそこに!)
私は人だかりにかけよった。
「お父様!ユウリは?ユウリはどこ?」
「ユーリ……」
暗い顔をしてお父様が私の名を呼んだ。
「ユウリは……」
まわりの人々も、みんな暗い顔をしている。
目が、赤くなっている人もいる……まさか!
「ユウリは?ユウリはどこ?大丈夫なんでしょう?けがは、ひどかったの?ちゃんと治るよね?会いたい。私、ユウリに会いたい。会って、かばってもらったお礼言いたい。そのくらい、いいでしょう?」
「……それは、できない」
「どうして?お父様。なんとか治療するって言ってくださったでしょう?治療の関係で眠っているから、お礼を言っても聞くことができない、そう、おっしゃるんでしょう?」
「……たしかに眠っては、いる」
「眠っててもいいわ。顔を見て、お礼が言いたいの」
「眠っている、というのは寝ているという意味ではないのだ……わからぬのか?」
「え?ま、まさか」
「できうる限りの手は尽くした。だが、思いのほか傷が深く……」
「うそ!うそうそうそ!信じない!そんな、うそ信じない!お父様いつもおっしゃってたじゃないですか!儂の魔法は最高だって」
「すまぬ。儂の力不足だ」
「そんな……」
足元が崩れ去るような、そんな感覚だった。
「ユーリ、顔を見てやってくれるかい?」
いつのまにかしゃがみこんだ私の隣で声がした。
見上げると、ひとりの男性が私を見下ろしていた。
どことなくユウリに似てる。
「さあ、おいで。クラウディウスさん、お嬢さんをお借りしますよ」
声をかけられたお父様は、ゆっくりとうなづいた。
連れられた先で、ユウリはベッドに寝かせられていた。
身体には真っ白なシーツがかかってる。
「ほら、近くにおいで」
ユウリのそばまでいく。
眠っているように見えるけれど……もともと色白だった顔は、青白くて。
「きれいな顔、しているだろう?」
私はうなづいた。
「ドラヴァウェイとして任務にあたり、バディであるきみを守り……使命を全うしたんだ。自慢の息子だよ。きみには、不本意な結果だろうけれど。クラウディウスさんを、きみの父上を責めないでくれ。彼もできうる限り、最大限の努力をしてくれたんだ」
自慢の息子。
ユウリのお父様だったのね。
ご自分の子どもを亡くしたというのに周囲への気遣いを忘れないなんて。
ユウリとそっくり。
ユウリの顔をじっと見つめる。
あの時も、あの時も。
思い出されるのは、ユウリの優しい笑顔だけ。
いつのまにか私の目からは大粒の涙がこぼれていた。
(なんでユウリなの?なんでユウリを連れていくの?連れて行かないでよ!返してよ!私にユウリを返してよ!)
声にならない声で、私は叫んでいた。
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