第12話
「たしかに、岩を砕いて小石として飛ばすことはあるけど、小石ひとつを岩にすることは難しいわね。スノウクロア様なら可能でしょうけど」
「それに、早いうちからわたくしたちと共に修練した方が、後々のためによろしいんじゃないかしら?」
「まぁ、いずれはそうなるからな。早いうちから、か。ちゃんとコントロールできるようになってからと思っていたが」
なんのことだろう?
「メールス、あんたもしかして、彼女になにも話してないの?」
きょとんとしている私に気づいたヘイスト様が言った。
「ああ、まだなにも……」
「あのねぇ……もう、こうなると、まだるっこしいを通り越してるわ。いったいなにをやってるのよ!」
アイガータ様もこめかみを指で押さえてため息をついている。
「しかたないわね、あたしが説明するから、足りないとこはよろしくねアイガータ」
「しょうちしましたわ」
「あんた……という言い方は失礼か。ユーリは世界を守る使命があると聞いているのよね?」
「は……い」
「それにはユーリが持つ
「ふぇ……?」
神様たちの?力を組み込む?
そんなことができるの?
それよりも……。
「あのぉ……わからない部分が出てきたのですが」
「どんなこと?」
「私にそういう使命がある……のは理解も納得もしています。ただ、どうして私だったりユウリだったり……なのかなと」
「それは、あたしたちにはわからないわ。決められたのはポロアス様だもの」
「あ、いえ。決められた方ではないんです。というか、えっと……同じ攻撃をするなら非力な私たちではなく、神様たちが直接戦われた方がずっと強力な攻撃ができるのではないですか?と」
「できない、からよ」
「できない?」
「そう。タブーとかではなく、物理的に」
「儂が説明した方がよさそうだな」
見えなくなっていた扉がスッと開き、だれかが入ってきた。
今度は、誰?
「スノウクロア様!」
……確か全能神。
ヘイスト様とアイガータ様は突然現れたのに、ちゃんとドアから入ってくるのね。
あ……後ろに誰かいる。
「ユーリが小石を岩に変異させたと聞いたからな。そろそろ説明する頃合いかと思う。よってユウリも連れてまいった」
「まずは……そなたたちは魔物がどういうもので、どこからきたのか。知っておるか?」
私たちは首を横に振った。
「全然、知りません」
魔物たちは基本、私たちが暮らす地区には現れない。
隣国との間にある自由地帯の森の奥に暮らしている……と、聞いているのだ。
国境にある監視所に常駐する警備兵が魔物の出現を確認したら、王宮へ連絡が行き魔法師たちが現地に赴く。
そして───追い払う。
だから、どこから来るとなったら森の奥。
でも、スノウクロア様はどこからきたと言った。
「どこか、ぼくたちが住んでいた場所とは異なる場所から来たのですか?」
ユウリが聞いた。
「さよう。そなたたちは
「いいえ」
「ぼくは、父様の書斎にあった本を少しだけ読んだことがありますが、詳しくは知りません」
「そうか……ユウリが読んだ書物の中に『チキュウ』という星の記述はなかったか?」
「チキュウ……チキュウ……たしかずうっと遠くにある星だと書いてありました」
「さよう。ここよりはるかかなたにある星、チキュウ。そこにはそなたたちと似た姿かたちを持つニンゲンという
わたしたちと似た生物。
そんな世界があるのね。
「その星にも優れた文化があるらしい。この世界のように魔法を使うものはいないそうだが、呪術はそれなりに普及しているという。そして魔物どもは……そのニンゲンが異世界転生に失敗した姿だというのだ」
「なんですか?そのいせかいてんせいというのは?」
ユウリが質問する。
いせかいてんせい……舌がもつれそうな言葉をすらっといえるなんて、やっぱりすごいわ。
「なんでも、不慮の事故で命を失ったものが、今までとは違う別の世界で新たな命を授かることらしい。それがたとえば王族であったり、勇者であったり……死ぬ前の記憶を持ったまま、過去の自分では成しえなかった名声を得ることができる、そういうものらしい」
「そんなこと、本当にあるならすごいことですけど。ぼくは、そういうの嫌いだな……ユーリもそう思わない?」
「うん。なんか違うと思う」
ずっとむかしの、魔法が日常ではなく、魔物もいない時代に生まれていたらよかったと思ってはいた。
でも、今聞いたような生まれ変わり方は、イヤ。
どこが?どうして?という理由なんて、ないけど。
「さっきスノウクロア様は、チキュウに暮らしているのはぼくたちと似た姿をした生物っておっしゃいましたよね。魔物たちは似ても似つかない姿ではありませんか。それはなぜですか?」
「魔物どもは……ニンゲンでいたときに何かしらの犯罪を犯した者、だという。その罪ゆえ、願ったような転生ができなかったのだ」
「ぼくたちを連れ去るのは、なんのためなのですか?」
「
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