それは深い静けさのような
「で、雄大さんの組織は『密売ルートを横取りしようとして、九国さん達の組織と対立している』で、いいのかな?」
「お!凄い!うんうん、ベリーグーだよ」
「で、私が・・・さっぱり分からないけどそのルートを何らかの形で把握している。雄大さんは外科・・・手術の事ばかり・・・組織の上位の方です。作戦の立案・実行は全てデュークが行っていると言ってもよいくらいの。ただ、誰もその姿を見たことはありません。指示は全て加工された声のみです」
デューク・・・「公爵」か。貴族の最上位とされる位。
「会社で言うと部長クラスかな?」
「お!斎木さん、面白い言い方するね。いやいやいや~もっと!多分取締役クラスだよ。私も死ぬまでに一度は見てみたいけど」
「見るとすれば、あなたが死ぬときでしょうね。さて、お嬢様。大分話しが逸れましたが、今後としては私とサーティンでお嬢様をお守りします。それと共にラビットの処理を。始末しても代わりが来るだけなので、出来れば確保して奴の組織のことを聞き出したいです」
「うちの組織も・・・何か組織組織って分かりにくいですね。うちの組織は『E・A2』って言うんです。遂行の『execution』と達成の『achieve』の頭文字を取って。・・・このくらいいいですよね、先輩?だってもう斎木さん、私たちの事まで知っちゃってるんですよ」
「まぁ、確かにそうですけど。ただ、そこまでにしなさい」
「はい!E・A2もラビットの組織はかなりの所まで掴んでるんで、まぁ問題ないと思いますけど。でも、出来れば斎木さんを酷い目に遭わせた事の天誅を与えてやりたいですよね」
一二三さんの話を聞き、確かにそうだと思った。
天誅ではないが、雄大さんの話に出てきた「妹さん」の事が頭に浮かんでいたのだ。
妹さんの復讐のために今の道を選んだ。
大切な家族を亡くした悲しみで・・・
まるで私と同じだと思ったが、私には九国さんがいる。
一二三さんも悪い人ではなさそうだ。
でも、あの人には・・・
そう思った時、私も何かしたいと思った。
そして自分でも思わぬ言葉が口をついた。
「私・・・学校に戻りたい」
「・・・と、言うことでみんな斎木さんの事を色々と助けてあげるように」
教室中に響く拍手を聞きながら、私は頭がクラクラするような酩酊感に近い緊張と戦っていた。
だが、まだ救いになっているのは・・・
「そして、新しい転校生の紹介をします」
そう言われて、隣の一二三さんはお日様のような笑顔で言った。
「北大路 一二三です。慣れないことばかりで右も左も分からないですが、ぜひ仲良くしてください。よろしくお願いします」
凄いな、当たり前だけど緊張感の欠片もない。
セリフを朗読するように滑らかに話すと、ぺこりと頭を下げた。
早速教室のあちこちから小声で「めちゃ綺麗だよね。お人形みたい」「うそ、凄い小顔」「どこかでモデルやってるのかな」と聞こえてくる。
我がごとのように誇らしい反面、初日からこんなに目立っちゃって大丈夫かな、と心配になる。
そして、私は酩酊感の中であの時、復学の提案をした時の事を思いだしていた。
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