僕と君と2秒の距離

色葉みと

【プロローグ】二秒の「間」

「あ、想來そらさん。おはよう」


 僕、卯月詩苑うづきしおんは、偶然キャンパスで会った友達、八木想來やぎそらさんに挨拶をした。


「……おはよう、詩苑しおんさん」


 今日も「間」ができてる。

 想來さんが話す時には、いつも二秒の「間」ができる。これに気づいたのは一週間前だ。

 かと言って、何を言う訳でもないんだけど。


「……今日も空想くうそうやる?」

「うん。いつもの時間からで大丈夫?」


 「空想」というのはMMORPG「空想世界を君と歩む」の通称のことだ。

 想來さんと出会ったのはこのゲームがきっかけだった。


「……いつもの時間からでお願いします」

「わかった! じゃあ、後でね」

「……後でね」


 そうして僕たちは各々講義に向かった。


 この時の僕は知らなかった。想來さんが陰口を言われていることを。それも、僕が原因で。

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