第23話 平和の象徴だそうです
私とゼクウの結婚式は、魔国の首都カサンドラの大聖堂で大々的に行われた。
王国と平和条約を結んだことは、思ったよりも国民に好意的に受け止められていたため、魔国の貴族の養女ではなく、王国のミッドランド家の娘として結婚することにした。
十年後に王国の出身であることを公にするつもりだったのを十年前倒しにしたのだ。
その結果、結婚式に私の父母として両親を呼べることができたのは幸いだった。
王国の娘が皇太子妃になることに対して、両国民の反応は非常によく、両国間の友好ムードが一気に高まった。旧敵国に王国の娘を献上する屈辱的な行為と見る人たちも一部にはいたが、その人たちには私がどんなに幸せかを見せてあげればいいと思った。
結婚式には魔国、王国の両国の皇族、王族と招待貴族および教会の上層部が参列した。
ソフィアは王国の王妃として参列している。私の両親、弟夫婦と甥っ子、シエル、アナスタシアももちろん参加してくれた。シアータ、マリアも来てくれたし、学園で仲の良かったペア魔法を組んでいたリリアナも旦那様と一緒に遠くから来てくれた。
皆が祝福してくれるなか、純白のウェディングドレスに身を包んだ私は、殿下と誓いの口づけを交わし、正式にゼクウの妻となった。
魔国スタイルの結婚式は、この後、全員が広場に出て、立食形式に移る。広場には仕出しの屋台が数十台も並ぶ。多くの人が日が落ちるまで、飲み食いして、私たちは次々と言葉をかけに来る参列者に応対した。
父は泣きながら、ゼクウの手を取って
「娘をよろしくお願いします」
と一言だけ言って、母に連れられて、人混みの中に戻っていった。
酔っ払ったシアータがシエルにネチネチと絡んでいて、アナスタシアが必死になってシエルを庇っているのが見えた。
ソフィアの周りに黒髪のグッドルッキングな魔族のメンズが集まっているが、王妃としてあれは大丈夫なのだろうか。護衛は全員眠らされているようで、ソフィアは好き放題、飲み放題、騒ぎ放題だ。まあいいか、ストレス発散させてあげよう。
後から知ったが、ソフィアは平和の象徴とか言って、魔族の黒髪男子を一人、王国にお持ち帰りしたそうだ。ソフィア、寂しかったのね。
皆それぞれに楽しんでくれて良かった。
愛する人と結婚できるなんて、これ以上の幸せはない。しかも、皆から祝福される結婚で本当によかった。
結婚式が終わり、東宮殿に戻った。さすがに疲れ果ててしまったが、ゼクウと二人でいると、全身が幸せに包まれている感じがした。体の芯から歓びが次から次へと溢れてくる。
結婚する前も二人でいるのは幸せだったし、楽しかったのだが、結婚すると、何というか、二人の距離感が全くなくなって、より一体感が強まる。
だが、当たり前だが、二人の体は別々で、物理的には一つにはならない。これが何とももどかしい。
「殿下、私は出来ることなら、溶けてしまって、殿下と一緒になりたいです。殿下と身も心も一緒になれたら、どんなに私は幸せでしょう」
「エルザ、実は私も同じことを考えていた。体が邪魔でエルザと一つになれないのがもどかしい」
結婚は契約だとか、家と家との結びつきだとか言う人もいる。実際そういう面もあると思うが、二人の意識にこんなにも多大な影響を与えるものだとは思いもしなかった。
(新婚ホヤホヤのバカップルの人たちの心境って、みんなこういうものなのかしら。今度、アンに聞いてみよう)
その夜、一緒になりたいという願いが、一部だけ叶いましたけれども……
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