第13話 眠くてたまりませんの
目を覚ましたら、ベッドの上だった。
「お目覚めになられましたか?」
イチという魔族の女性だ。
「私はどうしたのでしょうか?」
「医師に診てもらったのですが、魔力切れのようです。安静にしていれば、回復するそうです」
後で詳しい説明を聞いたのだが、石化中に生命維持するために魔力を少しずつ使っていたのではないか、ということだった。魔力切れという症状は聞いたことがなかったが、魔国では割と知られているらしい。
「申し訳ございません。お世話になりっぱなしで。ゼクウ殿下に是非お礼を申し上げたいのですが」
「礼には及びませんが、殿下がお話しされたがっております。呼んで参ります」
私はまた喉がひどく渇いていた。水差しが枕元に用意されていたので、それを頂いたのだが、全部空にしてしまった。
ゼクウはすぐに入ってきた。失礼のないように起きあがろうとすると制止された。
「そのままで結構です」
「申し訳ございません。何から何までお世話になりまして」
「いいえ、お役に立てて光栄です」
ゼクウはそう言って微笑んだ。
(この人、見れば見るほど、ものすごい美形だわ)
「ご自分のお家のようにゆっくりとなさって下さい。いつまで居ていただいても結構ですから」
「ありがとうございます。お言葉に甘えさせて頂きます」
「まだ見知らぬものとの会話はお疲れになるでしょう。シエル殿とアナスタシア嬢をお呼びして来ます。体調が戻られましたら、改めてお話しさせて下さい」
「はい、お気遣いありがとうございます。また是非お話をさせてください」
私はこの非常に感じのいい青年とじっくりと話してみたいと思った。
ゼクウが退室して、シエルとアナスタシアが入って来た。
「お目覚めになって安心しました。魔力が戻らないこともあるらしく、その場合は眠ったままになるそうで、とても心配しました。倒れられてから、丸三日お目覚めにならなかったのです」
三日も経っていたのか。
シエルは色々と医師と話したらしい。魔族は魔力も魔圧も人族を上回っているのだが、そのためか構文の研究が人族ほど進んでいない。その代わり、魔力と魔圧のことはよく研究されており、魔力の枯渇は魔力と魔圧を増やす訓練中にしばしば発生するそうだ。
「先生ももうすぐ来られますので、また診て頂きましょう」
「ありがとう。色々とお世話になって、申し訳ないわね」
「何をおっしゃいますか。十年間何もできず、申し訳ございませんでした。ようやくお役に立てて嬉しいです」
「シエルたちはこれからどうされるのかしら」
「体調が戻られてからお話した方がよろしくないですか?」
「大丈夫よ。ただ、お水を頂きたいの」
「私がイチさんに頼んで参ります」
そう言ってアナスタシアが退室した。
「シエルさん、アナさんが可哀想よ」
「はい、分かっております。きっちりと責任を取るつもりです」
「あなたの好きな女性は彼女ではないのね。どんな方なの?」
シエルが寂しそうに笑った。
「もうその方はお亡くなりになりましたので……」
「ごめんなさい。不躾なことを聞いてしまったわ」
「大丈夫です。ご心配をお掛けして申し訳ございません」
「心配だなんて……」
ソフィアがいたから、元々諦めていた恋だったが、叶わないことが決定的になると、やはり寂しい。でも、アナの十年間の献身を私は無視することなんてできない。
アナスタシアが水差しを持って入って来たが、私はまた全部飲み干してしまった。どんなに水を飲んでも、しばらくするとすぐに喉が渇いてしまう。いったいどうしてしまったのだろうか。
まずい。また恐しく眠たくなって来た。
「シエルさん、アナさん、ごめんなさい。また眠ってしまいそう……」
私が次に目が覚めたのは、二日後だった。
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