魔王の知ってるこの世界

じゃがバター

第0話

「ふふ」


 狂った女が笑う。


「勝手な理由で私をこっちに喚んで、私から全てを奪ったのだもの」

風に吹かれて白いローブがはためく。


「あなたたちも私が喚び出したもので全てを失い、滅べばいいんだわ!」


 王城の、一番高い塔のバルコニー。大勢の視線を集めながら、笑いながら泣き、絶叫する女。


 その女の体から闇が生まれる。喚び出し、その喚び出した相手に魔素を縛るための魔法陣は、女の躰の中にあった。


 世界中の魔素が女の躰に、躰から溢れる闇に惹かれるように集まってくる。しばらく前まで聖女と呼ばれていた女の魂は最高の触媒。女の躰が壊れ、生命を捧げることで発動する魔法。


 ――魔王召喚。


「な……っ! くそっ! 戻せ・・、早く!」


 世界に満ちる魔素を、害あるものから人に優しきものへと変える力を持つ聖女。異世界から無理やり喚ばれ、その地位にいた女には、元の世界へ戻す方法はないと伝えられていた。


 ――それは嘘だ。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る