透明侵略 ブランネスカの無力な憂国

音絵青説

仮説...歩くだけで儲かるアプリは偵察行為である

今から記すのは私の親友ブランネスカが遺した手記の転記である。

手記はどうしてそうなったのか、酷くバラバラに裁断されており、またブランネスカには日付や連番をつける癖がなかったようだから、どういう順番で書かれたのか定かではない。

なので兎に角、目についたものから転記してみることとする。





仮説...歩くだけで儲かるアプリはスパイ行為である


歩くだけで儲かるというアプリが喧伝されてすぐ、懐疑主義を旨とする私はその危険性を敏感に嗅ぎ取った。

公平で客観に立つように言えば勘繰ったのである。

まず私の中での結論から述べさせて貰うならばそれは各国の路地まで把握せんとする試みであり、偵察行為である。


少し疑いの目を持って見てみればわかることだ。

何故歩くだけで儲かるというのか。

そんなものを作り普及させようという動機は何か。

ビッグデータの収集に他ならないであろう。

表向きは平穏を保っているこの社会も常に水面下で数々の不愉快な思惑が入り乱れているのだ。

他国は全て仮想敵国であり如何に静かに諜報活動をするかが現代の新しい戦争の形である。

そらは冷戦と似ているが冷戦が表向きにも危険な戦争状態と認識されていたのに対して現代のそれは一般市民には気づかれないように粛々と行われている点が異なる。

いや、最早戦争とも呼べぬ。

それはただただ一方的な侵略なのだ。

見えないだけで着々と進んでいる透明な侵略。

私の切なる憂国の念もその巨大な思惑に飲み込まれればすぐさま虚構と一蹴されるのであろう。

だから私はこの念を手記に託すのだ。

最早デジタルは信用ならない。頼れるのはアナログ手法に限られる。

話が逸れた。

兎に角歩くだけで儲かるアプリは危険だ。

位置情報の取得移動経路データの蓄積という意味では単なる地図アプリも危険であるが、歩くだけで儲かるアプリはそこに金銭的利益という強い訴求力があり、ユーザーは金のために位置情報が共有されることに対して普段以上に無頓着になるだろう。

通常の地図アプリの度を越して移動経路を常々把握されるというのは、地図アプリに乗ってないような裏道や施設迄把握されるということだ。

それが悪用される段になってやめてくれなどと宣ってももう遅く、共有した時点で悪用するかしないかの主導権はサービス提供者に握られてしまっている。

わたしの周囲にはまだあれらのアプリを入れている者はいないが今後そのような動きがあれば私の周囲だけはなんとしても阻止せねば…。

ああ、国が侵略されている。

その事にまだほとんど誰も気づいちゃいない。

嘆かわしい…。

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