メドゥーサの翼

 先日、「翼をもつメドゥーサのモザイク画が古代ローマの邸宅跡で発見される」という見出しを目にした。

 こういうの大好きで、すぐに飛びつくタイプ。

 それ、ローマのどこですか。

 いつのものですか、

 と興奮したら、ローマではなく、スペイン西部、ポルトガルの国境に近いメリダにある遺跡だという。


「ローマ時代の豪奢な邸宅で、翼のあるメドゥーサの頭を描いた2世紀、約1800年前の色鮮やかな巨大モザイク画が発見された」

 という内容の記事だった。


 30平方メートルもある大きなメドゥーサで、頭に翼を持っており、とても珍しいという。

 ええっ。翼ですか。

 その写真が載っていたので見たら、(近況ノートにアップ)

 これが、なぜメドゥーサなのかと思った。

 そのこわい顔はメドゥーサのイメージだけど、その頭髪は蛇だと決まっているはず。この髪、蛇ではないし、翼があるってどういうこと?


 メドゥーサの像というと、まず思うのが、イスタンブールの地下貯水池(地下宮殿)で見た大きな石柱。6世紀、ビザンツ帝国の時に作られたさかさまと横になったふたつのメデューサには、翼はなかった。

 絵画では、ダビンチ(作だと言われていた)絵画、カラヴァッジョの盾(このふたつはフィレンツェのウフィツィ美術館にある)のメドゥーサがあり、じっくりと見たことがあるけれど、頭髪が蛇で、そこに翼はなかった。ところで、ダビンチ作と言われていたメドゥーサは超がつくほどすばらしい。これについては、いつか書きたい。


 だから、そのモザイクはメドゥーサではなくて、メリクリオス(ギリシャ神話ではヘルメス、英語ではマーキュリー)じゃないですか、と私は思った。彼は神々のメッセンジャーを務め、羽根のついたサンダルと帽子がシンボル。商業の神でもあるから、この家は商売をやっていたので、などと考えた。


 しかし、私が知っているのは6世紀以降のばかりだから、古代のメドゥーサを調べてみようと思った。


 ところで、メデゥーサというのはもともとは美しい女性だったけれど、アテナの怒りを買って、頭が蛇の醜い怪物にされてしまった。

 それが恐ろしい怪物で、その目に見られると、人は石に変わるのだ。しかし、ゼウスの息子ペルセウスが討ち取った、とギリシャ神話では語られている。


 それで、ググってみたら、メドゥーサのモザイク写真は10以上見つかり、

どれにも翼がある。

 近況ノートには1枚ずつしかアップできないので、今回の図に一番近いモザイクのものをアップしてみようと思う。


 神話によると、メデゥーサが醜く変身させられた時、髪の毛は蛇に、肌は青銅色に、背中には大きな黄金の翼を持った怪物に変えられたのという。

 

 翼が背中にあっては、正面画では描けないから、頭につけたのだろう。

 メドゥーサに翼が描かれなくなったのは、キリスト教の広がりと関係があるのかもしれない。翼があるのは天使だから、怪物に黄金の翼があってはまずいからかも。

 そうか、もともとのメデゥーサには、翼があったのだ。 


 そう言えば、Kinki Kidsに「ぼくの背中には羽根がある」というかわいい歌があったよね。メドゥーサとは関係ないけど。





 

 







  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る