憧れお姉さんは、僕の女神様

舞夢

第1話 出会い

僕(本田瞳)が、あの人(坂田里香)を知ったのは、高校1年生の4月、入学式の日だった。

あの人は、僕と同じ通学路だった。

(家が近所であることは、後で知った)


あの人は、僕の少し前、満開の桜並木を、ゆっくりと、歩いていた。

(今から思うと、わざと、ゆっくりだったようだ)


並んだ時、いきなり話しかけられた。

「ねえ、君、新入生?」

(すごく甘くて、きれいな声で、僕は照れた)


「あ・・・は・・・はい!」

僕は、ドキドキした。

そして、噛んだ。

あの人が、すごく綺麗だったから。

キラキラしたお姉さんに見えたから。

満開の桜より、お姉さんのほうが、よっぽど綺麗だった。


「私は、坂田里香、2年生だよ、よろしくね!」

(本当に明るくてきれいな声)

(・・・そしてお人形さんより可愛い!上品な雰囲気!)


僕は、また噛んだ。

(心臓がバクバク、顏も真っ赤を自覚した)

(本当に恥ずかしかった)

(でも、こんな綺麗なお姉さんと話している、それだけで舞い上がっていた)


「あ・・・あの、本田瞳って言います・・・」

「よ・・・よろしくお願いします」

(この時点で、頭が真っ白になった)


お姉さんは、綺麗な顏で、上機嫌だ。

「瞳君って呼んでいい?」

「君、なんか、すごく可愛い感じ」


僕は焦った。

(そんなこと言われたことなかった、こんな綺麗なお姉さんに)


「はい!」

(声は高く裏返った)


お姉さんは、ますます上機嫌になった。

「瞳君は、私のことを何て言うの?」

(悪戯っぽい目で聞いて来た)


「あ・・・里香先輩で?」


お姉さんは、輝くような笑顔。

「よろしい!瞳君」


(僕は、心臓がバクバク状態)


里香先輩は、いろいろ話しかけて来た。

「ねえ、部活は決めた?」


僕は素直に答えた。

「全然わからないです」


里香先輩は強く僕の手を握った。

「私は、音楽部なの」

「決めてなかったらおいで」


僕は焦った。

「楽器はピアノしかできないです」

「他の楽器は、よくわからない」

(母さんがトランペット吹きだったけれど言わない)

(少し習っただけ、音が出る程度なので)



里香先輩は、ポンと僕の背中を叩いた。

「いいよ、瞳君」

「私が教えるよ!」

「一緒に並んでトランペット吹こうよ」

「弟子にしてあげる!」


「・・・はい」

(うれしいけれど、自信がないので、僕は小さな声になった)

(でも、胸はキュンキュンしていたから、これが恋なのか?と思った)

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