塔の女
「それじゃあ早速協力してあの
「ちょっと待つのじゃ。あやつは強大な
もっともらしいことを言っているが、結局はアレクシアの掌でただおどっているだけの二人。
アレクシアは微笑みながら答える。
「それはいいですね。私もぜひお供しますよ」
「そちは来なくていい!! それよりも
「……この私がそんなことをするように思えますの?」
どこからどうみても貴族令嬢そのもの。身軽さのかけらもないミランダである。
「そんなまな板をしておるのに動けんのか? 何のためのまな板じゃ!」
「誰が好き好んでこんな体になったと思ってるのよ!」
すでに同盟が半ば解消され気味である。
「あらあら、そんなに喧嘩をしてはいけませんよ?」
「誰のせいよ!?」
「ミランダさん?」
「うむ、そうじゃな」
「なんで味方のあなたが敵側に回るのよ!?」
声を大にしすぎて息を荒げるミランダ。
「ところでどうして索敵なんて必要なのよ。
「味方を増やすためじゃ。少々奇怪なところに住んでるやつでな。妾でも歯が立たん。だから手を貸してほしいのじゃ」
魔王にそこまで言わしめる相手である。
この領地にその聖域を侵せるものはいなく、彼女がどの陣営でもないことを明確に表していた。
そもそもユーリを主として集まっているアルフの街では、どちらかといえばアレクシア側の人間は少数派なのだが――。
「わかったわ。この私が協力してあげるわ」
「なら早速行くのじゃ」
「ちょ、ちょっと待って!? 今はもう夜でしょ!?」
「だから好都合なのじゃ。行くぞ!」
むりやりルシルに引っ張られる。
それをアレクシアは手を振って見送っていた。
◇ ◇ ◇
夜でも魔道具による照明で一定の明るさを保っているアルフの街。
それでも人通りは激減しており、ほとんど人を見かけない。
「こんな時間に行っては相手の方にご迷惑ではありませんか?」
「問題ない。むしろこの時間しか起きておらんからな」
「夜型の方なのですね」
ミランダの中で闇夜で動く暗殺者のイメージが浮かぶ。
確かにそういった彼らならこの時間くらいしか会えなくてもおかしくない。
そういった人材がいるのなら手を結んでおくとあとあと役に立ってくれそうである。
ただたどり着いた先はミランダすら予想だにしなかったところである。
「ここじゃ」
「な、なんなのよ、ここは!?」
たどり着いたのは少しでも壁に触れば崩れてきそうなほどいびつな形をした塔?と呼べる何かであった。
輪切りにした各階層が奇跡的なバランスで倒れずにいる。
そんな印象である。
「ここの主がこの塔の形にこだわって、無理やりこの形で作らせたそうだ」
「……変な方なのですね」
「変な奴じゃがその力は本当じゃぞ」
「確かにこんな塔を支えるなんて……。これって魔法ですよね?」
「おそらくはそうであろう」
興味をもったミランダは塔が本当に壊れないか試そうと力いっぱい押そうとする。すると――。
「お、お、押さないでください!!」
慌てた様子の声が塔の上層部から聞こえた気がする。
しかし、周りには誰もいない。
「気のせいですわね」
周りを確認したミランダは再び塔を押そうとする。すると――。
「だ、ダメって言ってますよ! 押さないでください!!」
やはり声が聞こえてくる。
「これがこの塔の主。大賢者メルティじゃ」
「大賢者……様?」
それにしてはやけに若い女性の声に聞こえた。
「なるほど、そういうことでございますね」
大賢者なら世間からその姿を隠したくて自分がここにいるとわからないようにしているはず。
それならば声を変えたうえで同情を誘うように言ってくるのはおかしなことではない。
――それにしてもどうしてユーリの領地に大賢者様がいるのよ!? いえ、ここは人里離れた辺境地。しかもユーリが来る前はろくに管理すらされていない。誰も来ないから、と隠れ住むにはちょうどいい場所かもしれないですわね。
ミランダは妙に納得してしまう。
つまりさっきの言葉はフェイク。
「驚かせないでほしいですわね」
笑いながらミランダは塔を叩いていた。
もちろん力を入れたわけでもなく、ツッコミがてら軽く押した程度なのだが、次の瞬間に塔はすごい音を立てて崩れてしまっていた。
「えっ……」
「き、きゃあぁぁぁぁぁぁぁ……!!」
塔の中から悲鳴が聞こえてくる。
さすがにここまで簡単に崩れてしまうとは思わず、ミランダは茫然としていた。
「お主、なかなかにひどいことをやるの。でも妾たちの味方が生き埋めになってしまったぞ」
「そ、そうですね。早くそのお方を助けないと」
それで自分は何もしていないことを証言してもらわねば。
どこまでも自分本位なミランダ。
そして、塔の主はすぐに見つかることとなった。
大賢者だけあって、あれだけの塔が崩れたとしても無傷だった。
ただ、服装がラフすぎるシャツ一枚であり、どこか性的な姿に見えるのは
「た、助かりました……。い、いえ、まったく助かっていないのですけど……。また私の家が……」
崩れ去った塔を見て、がっくりと塔の主は肩を落としていたのだった。
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