危険な相手

 サーシャが現地にたどり着くとそこは阿鼻叫喚な状況だった。


 子供たちはなぜか頬を赤らめて倒れている。



「サーシャちゃん、このおっぱいさんひと、危険だよ……」



 勇者であるエマすらもまるで太刀打ちができなかったようだ。

 そして、先行したアルは、というとおっぱいさんだいあくまに捕まっていた。


 その凶悪な二つのおっぱいさいしゅうへいきに顔を挟まれ、くるしそうにもがいている。



「アルさん、大丈夫ですか!?」

「サーシャか。俺はもう……ダメだ。ここは俺に任せて先に行け!」

「先って行く場所なんてないですよ!」



 サーシャは鋭い目つきでおっぱいあくま持ち主しょうたいを見る。


 長い銀髪をした聖職者の服を着た女性である。


 しかし、それで騙されるサーシャではない。

 聖職者がそんな凶暴な二つの武器を隠し持っているはずが――。


 そこでサーシャはエミリナのことを思い出していた。

 彼女も成長途中ながらも大きな二つのメロンを隠していた。



「はっ!? も、もしかして――」



 聖職者になるにはとある体の特徴が必要になるのだろうか!?



 あまりにもおかしな状況ばかり当たってきたせいで、サーシャも困惑していた。

 ただ、そんなことを考えていたせいで反応が遅れてしまう。



「あなたがサーシャちゃんね。エミリナから聞いたよ。とりあえず挨拶代わりのぎゅーっ」



 恍惚の表情を浮かべて地に伏したアルを優しく置いた後、おっぱいさんあくまはゆっくりとサーシャの方へ近づいてきて、その柔らかいクッションのような体で抱きしめてくる。


 それはまるで空を浮いているような心地よさ。


 先ほどまで恐怖の色に浮かんでいたサーシャの表情は一瞬で頬が緩み、皆と同じ恍惚の表情へと変わっていた。


 そして、そのまま全てを委ねてサーシャの意識は落ちていた。




       ◇ ◇ ◇




「はっ!? あ、悪魔は!?」



 サーシャは目が覚めたら自室のベッドに寝かされていた。



「ゆ、夢でしたか……」



 嫌な夢を見てしまった、と少し息を整える。



「悪い夢でも見たのかしら?」

「はい、実は――」



 夢の中で聞いたその声にサーシャの動きは固まる。

 そして、ゆっくり声のした方へ振り向くとそこにいたのはあのおっぱいさんだいあくまだった。



「あ、あ、あなた、どういうつもりですか!? さてはこの領地を乗っ取ろうとしている悪魔ですね」

「これは酷い言われようね。私はただエミリナに頼まれたから来ただけなのに」



 女性は言いながらもさり気なく巨大なスイカを揺らしていた。

 一方のサーシャは激しい動きをしたとしても一切動くことはない。


 自分の体に手を当てながら言う。



「私は何も聞いていませんよ!?」

「それならまたエミリナの先行独断かしらね。あの子にも困ったものよね」

「それで一体この領地になにしに来たのですか!?」



 相手に飲み込まれないように強い言葉を使う。

 それが微笑ましかったようで女性は頬に手を当てながら笑みを浮かべる。



「そんなに敵視しなくてもいいわよ。私はここの子たちの教育を任されただけだからね」

「教……育?」



 一体何を教えるのだろうか?

 まさか性教育!?



 なんてらしくないことを考えてしまうのは偏に女性の容姿のせいに他ならなかった。



「とりあえず自己紹介をしますね。私は王都の神殿で子供たちに勉強を教えていた神官のアレクシアです。よろしくお願いしますね」



 おっぱいさんはアレクシアという名前のおっぱいさんらしい。



「……私はサーシャ」

「えぇ、聞いてますよ。とっても可愛いお兄ちゃんっ子って」

「お兄っ!? 兄様は関係ありません! ここは私がいたいから来ただけです!」

「うんうん、わかってるわよ」



 なぜか上手くあしらわれているような気がしてならない。

 でも、エミリナからの紹介ということもあり、あまり無碍にするわけにもいかない。



「わかりました。すぐにあなたの家と授業に使える部屋を用意しますね」



 どうしてこうも次々に問題が起きていくのだろうか?

 サーシャは頭を押さえながら開いている家がないか、この領地の地図を眺める。



「今だと少し離れたところにある家しか開いてないですね。そこでいいですか?」

「かまいませんよ。野宿も覚悟してきましたから」

「それはやめて下さい。兄様の沽券にも関わります」

「そういえば領主様はどうされたのですか?」

「兄様は少しだけ出かけてます」



 どうしてそんなことを聞くのでしょうか?

 もしかして、お兄ちゃんを狙ってる悪魔なのかも。



 本当にこの領地において良かったのか、どうしても自信が持てなかった。

 実はお兄ちゃんを陥落させようとしている敵だったのでは?


 もしそうなら……。



「うん、私がなんとかするしかありませんね」

「では私も協力しますね」



 討伐対象のアレクシアあくまがなぜか話を合わせてくる。

 もちろんそんな甘言には乗らない。



「いえ、これは私がしないといけないことですから!」

「わかりました。では、その時はサポートさせていただきますね」



 こうしてサーシャとアレクシアによる『おっぱいさんアレクシア撃退作戦』が決行されることになった。

 どうして当事者がパーティーにいるのかは永遠の謎である。

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