テトラポット

ロマンチックになりたいだけの海岸で、数時間前にどこかの港を出ただろう巨大な船を見る。風が耳と髪の間で音を立てて、煩わしいけれど私にしか聞こえていない。春がいつまでも来ない3月は、誰かのことを置いていかないように足踏みをしているようだった。平凡なまま日常に浸った右足、抗って流木の影を踏みつけている左足、真昼間の月。

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