船頭探偵 水守天馬の冒険

五速 梁

第1話 メアリーの残像  序章


               

 光る海と空、溢れんばかりの生命のきらめきが、私を包んでいた。


 私は母に抱かれ、幸福にまどろんでいた。愛情と、陽射しと、何億もの生命を育んできたこの星の鼓動が、私をゆりかごのように揺すっていた。


 だが、すべてを奪う忌まわしい響きは、足元から突然、やってきた。


 ぎしぎしという不吉な音が聞こえたかと思うと、急に空と海とが反転した。

 母の血を吐くような叫び、私はきつく抱きしめられ、恐怖に目を閉じた。

 

 ――ママ、パパ!


 大きく強い父、暖かく優しい母。小さな身体から迸る叫びに、応える声はなかった。


 次の瞬間、世界が壊れるような衝撃と共に、私は冷たい闇の中へと投げ出された。


 あの日、運命の凶暴な爪によって、幸福な日々は永遠に引き裂かれてしまったのだ。

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