第26話 世界の歪み
草木も生えない冷たい道を歩き続ける。見晴らしはいいのに、獣一匹もいない土地は見捨てられたかのように静さが支配していた。聞こえてくるのは自分達の足音と白い息の音。歩くことには慣れているとはいえ、ここまで静かだと自分が自然の一部になったんじゃないかと、ルフは錯覚しそうになる。そんな中、変わらないと思った時間に変化が訪れる。
先頭にいた人が歩むのを辞めたので、五人の足も止まる。よく見ると四本の足を持ち、三メートルはあるであろう身体をした鉄の悪魔こと機械が周りを見渡している。機械はこちらに気付いていない様子だ。村の男達とアランは武器を持ち、ルフ達もモイラの準備をする。分析班にいるローは目を細めて機械を見つめる。
「あの機械、目の部分が弱点みたい。足は硬いから気を付けて」
ローのモイラは、見たものの弱点を見抜くものだ。旅では度々お世話になっているが、ケラー教の村の男達はモイラを初めて見るようで、あれがモイラと少し話している。こちらに気付いた機械は走り出したが、いきなり動きが止まったのを見て、ベルはルフのモイラだと理解すると宙に浮かぶは、火で出来た五本の矢。矢が自動で動き出し出せば的確に目と言われたカメラの部分を破壊。その間に、ソフィアは針を取り出せばルフが息を吸い込む前に地面に縫い付けて、動けなくしていく。見事な連携に村の男達は感心の声を漏らす。そして、自分達も負けてはいられないなと気合いを入れると、硬いと言われていた足の部分を、熱がこもった刃で紙のように斬り、完全に動けなくする。動けなくなった機械を分解していくと丸く赤い玉が見えてきた。出てきた玉を壊さないように取り出すと、機械はブオンと音を鳴らして起動を停止した。
「これがコアっていうものだな。俺達の武器のエネルギーになったり、村の資源になったりする。今回のだと約三か月はもつ大きさだな!」
「すごい大きさだ。こんなのは初めて見たよ」
自慢げに見せてきたのは直径五十センチの赤い球体。アランが時々丸い何かを取っていたのは知っていたが、よく見るのは四人は初めてだった。そして、ルフとベルは故郷ナチャーラ村の紙の箱があった洞窟で見た太陽に似ているなと感じた。
「にしても、アランの仲間達はすごいな! モイラを初めて見たがまるで説明がつかん。俺達からしたら、魔法を使われたようだ」
誰一人怪我をしていないことに機嫌がいいのか、リーダー格の男はがっはっはっと大きな笑い声をあげながら、ルフの背中を叩く。ルフも鍛えているが、大きな手はそれ以上に強い力を感じられ、痛みを感じながらも、褒められたことに嬉しく思っていた。
「よし、じゃあ、皆帰るか! 今日もご馳走だ!」
リーダー格の言葉に村の男達も嬉しそうに話ながら来た道へと戻っていく。行きとは違い、賑やかで暖かい雰囲気にルフは内心安堵をした。今回も誰一人欠けずに終わった。イグニス神に内心祈りを捧げながら、ノワル村へと帰るのであった。
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