第12話 竜騎士世羅
自分が何者になったかは即座に理解できた。
背中には硬い鱗の翼が生えている。尻尾が生え、手には鋭い鍵爪が生えている。全身をびっしりと深緑の鱗がおおっている。獣王バルザックに潰された内蔵はすっかり回復している。痛みはまったくない。それどころか体中に力がみなぎる。
腕を傷つけられたバルザックは僕を睨んでいる。あからさまな殺気をこめた目で僕を見ている。
彼に睨まれてもまったく恐怖はない。
自分が上位の存在になったのが理解できた。
「俺の体を傷つけた罪は万死に値する。生まれてきたことを後悔させてやる!!」
バルザックは咆哮する。
やつの体がさけ、巨大化する。その全長はおおよそ五メートルほどだ。これは僕の見た感じだけど今のこの
やつはいわゆるキマイラに変身した。
獅子に顔に鷲の翼、蛇の尻尾が生えている。
ガルウウッと凶悪な声で吠えていた。
バルザックはその巨大で鋭い爪で僕に襲いかかる。
だが、その爪は僕の鱗によって弾かれる。
僕は羽を一つ羽ばたかせる。簡単に数メートルは飛ぶことができた。
なんて爽快なんだ。
空を飛ぶとはこのように心地よいのか。
バルザックも鷲の翼を持っている。その翼を羽ばたかせて、肉薄する。
口をかっと開ける。
口の中に炎の玉が発生する。
あれだ、ゲームなんかでよくある
その火炎の玉は僕に向かって吐き出される。
灼熱の炎が僕を襲う。
僕はその地獄の業火のような火の玉を翼を何度かはばたかせて発生させた風で吹き飛ばす。
僕とバルザックは空中で激闘を繰り広げる。
幾度となくバルザックは爪と牙、蛇の毒牙で攻撃するが
獣王とはよく言ったものだ。
最強種である竜となった僕にやつは互角以上の戦いを繰り広げている。
おそらくだけど経験値の差だろう。
僕はこのような戦いは生まれて初めてだ。
しかし、バルザックは明らかに戦い慣れている。フェイントなども巧みにつかい、僕の攻撃はろくに当たらない。
「やった解けたわ」
光の檻は霧散する。自由になった世羅は僕に駆け寄る。
「ダーリン素敵だわ」
世羅の美的感覚はよくわからないが、褒められたのは素直に嬉しい。
竜となった僕は畏怖されても仕方ないのに世羅はうっとりとした顔で僕を見ている。
世羅は
「うふっダーリンの上に乗っちゃった」
何故か世羅は興奮している。僕の首をその太ももできゅっと挟んでいる。
「さあ、あんな奴とっととやっつけちゃいましょう」
世羅は器用に足だけで僕に乗り、
僕は一度、距離をとる。
羽を一つ羽ばたかせただけど十メートルは後方に下がれた。
さらに羽を羽ばたかせる。
僕はスピードをつけてバルザックを襲う。
やつも僕を迎え撃つべく、咆哮して待ち構えている。大きく開かれた口には地獄の業火があつまっている。
「さあダーリン、私たちの愛の力をみせましょう」
きゃははっと世羅は実に楽しそうだ。
串刺し公の槍をぶるんぶるんと頭上で回転させる。
僕とバルザックは肉薄する。
バルザックは僕を焼き殺すべく、獄炎の玉を今まさに吐き出そうとしている。
僕はさらに翼に力をこめて、スピードを加速させる。
風を切り、僕はバルザックに接近する。
バルザックの炎が僕に襲いかかる寸前、世羅は串刺し公の槍をその炎がためられた口腔内に投擲する。
派手な音をたて、串刺し公の槍は加速し、文字通り視力の限界を超えて見えなくなった槍は空を駆ける。
ぐぎゃああっ!!
耳をおおいたくなるような絶叫とも悲鳴とも区別がつかない声が響く。
口を貫かれたキマイラは地面に墜落し、何度かけいれんしバルザックは絶命した。
やつはもとの人間の姿に戻っていた。
顔は見るに絶えられないほどぐちゃぐちゃになっていた。
僕はふわりと着地する。
そして僕は変身がとかれ、もとの人間の姿にもどった。
その直後に耐え難い疲労が襲い、意識が途切れる。
僕の体を世羅は優しく抱きしめる。
「ダーリン、ゆっくりお休み」
そう言い、世羅は僕の顔をその巨乳に押し当てる。ああっやっぱり世羅に抱かれるのは心地いい。僕はその極上の柔らかさにつつまれて、眠りについた。
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