✦·⋆断章⋆·✦
十二の石棺の中央で男の慟哭が響いていた。
彼を支えた騎士たちも、誰よりも愛していた息子もあっけなく命を落とし、むざむざと最も罪深き己の身が生き永らえている。
男は運命を呪った。
男は世界を呪った。
男は彼を陥れた「人間」たちを呪った。
男は喜びを呪った。
男は楽しみを呪った。
男は自らに流れる血を呪った。
男はありとあらゆるすべてを呪い、呪って、呪い抜いて――絶命した。
ところが男の嘆きを闇の底で耳を澄ませて聞いている者がいた。禍々しい殺気を放つそれは男の呪詛を養分としてむくむく育っていった。黒いどろりとした塊が象ったのは一輪の薔薇だった。
男の死体へとその茨を伸ばし、吸い取った血潮でその花弁は赤黒く染まる。
そしてそれは「男」とよく似たかたちを取り、古き城の中央で巨大な呪いを編み始めた。それは城を飲み込み島全体へと広がっていったのだった。
赤黒い薔薇の花となり、咲き誇る呪詛をそれは愉悦の表情を浮かべて眺めていたのだった。
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