第14話 蹂躙王女
魔王城に入ると中はガランとしていて、敵の気配が無い。ミリア達は敵の居ない城を博士の案内でどんどん奥に向かって行き、暗い玉座の間に入ると、声が聞こえてくる。
『よくぞ来た。王女ミリアよ』
急に玉座の間のかがり火が灯り明るくなって、大きな玉座の前に蒼い肌の男が立ち、その両脇を巨大な一つ目の鬼と、首が無い代わりに胴体に顔のある巨大な存在が固めている。
「お前が魔王です?」
『我こそは魔王である!』
「お前をぶっ飛ばしに来たです!」
『フフフ、ならば四天王二人と共に、全力でお相手しよう。行け!』
『オイラが先に行くぜ!』
魔王の号令によって突っ込んでくる一つ目の鬼は、城が破壊されるのも構わずに巨大な棍棒を振り回し、突撃してくる!
危険すぎる相手に、お荷物を持っている銀色ミリアと王子を俵持ちにした勇者が下がっていく。
『魔王軍四天王! 一つ目のキュプロ! 参る!』
「来いです!」
対する一人残ったミリアは、両足を開いて迎撃の構えだ。
地響きを立てて突っ込んでくる一つ目の巨鬼が、自分の身長よりも長い金属の棍棒をミリアに何度も、何度も、振り下ろす。
激しい攻撃に石造りの床はひび割れて、振り上げるときに破壊された天井からは瓦礫が降ってくる。
巻き上げられた砂煙で視界が遮られた……。
肩を上下させて落ち着いた一つ目が、両手を上げて勝利の咆哮を上げようとすると、砂煙を切り裂いてミリアが飛び出してきた。
当たりそうな棍棒は受け流したのだ!
『バカな!』
「バカはお前です!」
完全に隙を突かれた一つ目の鬼は驚き戸惑っているが、そんな隙を見逃すミリアではない。
「破ァです!!!」
自分の三倍以上の身長を持つ一つ目の鬼に対して、飛び上がって目を合わせて振りかぶった拳をその一つ目にぶち当てた。
顔面どころか眼面を殴られた巨鬼は、縦に何度も回転しながら吹き飛んでいき、躱した魔王の背後にあった大きな玉座を破壊すると、城の壁に激突、動かなくなった。巨体の激突に、ガタガタになった天井からパラパラと土ぼこりが降ってくる。
それを見た魔王と胸顔面はドン引きしている。
手を叩いて、一仕事したように額の汗をぬぐったミリアは、腕を回して調子を確かめている。さすがのミリアも激しい連撃にちょっと苦労したようだ。
そんなミリアに魔王が遠慮気味に声を掛ける。
『王女ミリアよ。お前は本当に人間か? 我、人間ってもう少し慎ましい存在だったと、記憶しているが?』
「もちろんです!」
『魔王様、例のアレはまだですか?』
『うむ……。すまないが時間を稼いでくれ』
ミリアの元気な返事に、進退の窮まった胸顔面がこしょこしょと、なにやら魔王と内緒話をしているが、ミリアの知った事ではなくステップを踏んで臨戦態勢だ。
そんなミリアの様子に、覚悟を決めた胸顔面が名乗りを上げる。
『俺の名はノーネッガ! 魔王軍四天王のノーネッガだ。行くぞ!』
「どんと来いです!」
体自体に鬼気迫る表情を浮かべたノーネッガは迫力があるが、王女ミリアは悠々と構えて受けて立つ。
両手に巨大なモーニングスターを握ったノーネッガと、白いドレス姿の王女ミリアが激突する!
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