王女の一撃

ランドリ🐦💨

魔王軍をぶっ飛ばす

〜王女の力〜 邪魔モノをぶっ飛ばす

第1話 拳聖王女

 「ふざけるんじゃないです」


 密談用の部屋で、肩まである金髪を浮き上がらせた鋭い碧眼の王女ミリアは激怒した。


 必ずこの手でそのふざけた連中を葬ることを誓う。


 立ち上がったミリアは制御を放棄した金色の闘気、可視化した生命エネルギーで椅子と机を吹き飛ばす。


「うむ」

 王は慣れたものだと泰然としている。


 その怒りの理由は単純で結婚予定の隣国の王子様、アルスが魔王軍を名乗る連中にまんまと攫われてしまったのだ!


「落ち着いてくだされ、ミリア様!」

 その事を報告した家臣は、どうにか王女を宥めようと朗報を伝える。


「既にご友人の勇者アリア様が救出に出向いておりますから、心安らかにお待ちくだされ」


 それを聞いたミリアは歩法の応用で音もなく扉に近づくと、部屋の扉を開けて一言告げる。


「友が行くと言うなら、私も行くです!」


 部屋には泰然としている王と慌てる家臣が残された。


「うむ、征くがよいミリアよ」


 王の言葉を背にミリアは廊下を早足で歩く。


 激怒しても廊下を走ってはいけないのだ。


 お母様との約束だ。


 早足で門を通り過ぎるミリアに、警備の兵は何時もの事だと気にしない。


「行ってらっしゃい、気を付けて」


 何しに行くのかも聞かずに、陽気に声をかけるほどだ。


「お姫様だ〜!」

「いつものアレかな?」


 ドレス姿のまま城下町を歩くミリアへ、町の人達も何時もの事だと気にしない。


「ミリア様、しつこいようですが走って街道を破壊しないようにお願いします」


 遂に街の外へドレス姿のまま出てきたミリアは、門兵の注意喚起の声に手を上げて返す。


「善処するです」


 街の外へでたミリアは遂に駆け出し始めて、確かめるように走り段々と速度を上げていく。


「絶対にぶっ飛ばして、助け出すです」


 駆け出しながら風になり、誓う。


 王子を助けて、お嫁さんにしてもらうのだ。


 お嫁さんになるのはお母様との約束だ。


 そんな王女の前に二匹の小鬼と呼ばれる、何処にでも現れる人間に敵対的な生物で魔物の一種がここは通行止めだと飛び出した。


 何処からか拾った剣を握る腰みのだけを着た小鬼に、停止して目を向けた王女の目は冷たい。


「こんな所に小鬼です?」


 ひとっ飛びでで近づくと、振り上げた剣の柄を殴る事で腕ごと弾き返して、空いた腹に軽く闘気を乗せた一撃を加える。


「私の邪魔をするなです!」


 軽いが闘気の乗せられた一撃に、小鬼の体が吹き飛ばされて近くの小山にぶつかり土煙を上げる。


 油断しないでステップを刻む動きは、ドレスなのに淀みがない。


 惨劇に怯えるもう一匹は剣を捨てて逃げ出すが……。


 当然、そんな隙を見逃すミリアではなく、向けられた背中に手のひらを向けると一気に距離を詰めて掌底を撃ち込む!


「破っです!」


 掌底を受けた小鬼は、その場で身体を波打たせて動かなくなった。

 体の内部を破壊されたのだ!


 自らの戦果に満足したミリアは魔物の死体を集めて、殴って作り出した穴に放り込むと震脚で穴を崩落させて片付ける。

 後片付けをちゃんとやるのは、お母様との約束だ。


 軽い障害をぶっ飛ばしたミリアは、その勢いに乗って街道をひた走る。


「邪魔するものを全部ぶっ飛ばすです」


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