螭が月を呑む話
武江成緒
第一話 巨螭 ~おおみずち~
夜の闇にまるく咲きほこる華のごとく、南の
静かにまたたく星々は、その歌声に包まれまどろむ天の赤子たちのよう。
その下では、空から降りくる
その銀と漆黒の
大魚か、鯨か、海獣か。
あるいはそれらすら喰らう、長大なる
されど
さらに
当然ながら、月の歌は無論のこと、日輪のおらび声すら、光を忘れたその
永劫に
人の耳に
黎明の
炎天かがやく南の海から、氷の閉ざす北の海まで。
余すところなく響き渡り、
――
―― 居る。
今宵も、また。
いえ、時すらささぬ深淵の奥で、
――
―― 齢
―― ほざけ。
―― あのような
果てなき
――
――
―― 呑むと言うたら、あれは
――
―― 抜かしたな。
通いては絶え、絶えては不意に
そこに新たな
―― そう言えば。
―― 月をだと。
―― そやつは月を呑んだのか。
―― 呑んだならば、いまごろ月は天に昇ってはおらぬだろうに。
―― いまだ月は昇っておるのか。前に月を目にしたのが如何ほど昔であったのか、
飛びかう
―― ならば、我が
――
――
――
そうして、しばし深淵はふたたび無限の黯黒と静寂のなかに沈んだかと思いきや。
海ひとつぶんの水がまるごと
はるか上方の
《第一話 了》
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