二章 ギルドとスキルと勝負 29

 「ヒルフェ様、今は何もしないでください。」

 「あ、あぁ。」

 と、俺も返事をし、呼吸を整えていく。必死に冷静さを保とうとしていた。

 彼女の言いたい事は解る。

 このままでは事態が好転はしないだろう。

 「どいつも、こいつも、…おいらを馬鹿にするんじゃねぇぞ!…あの時は油断したんだ。…不意打ちされなきゃ……!!」

 逆にノイマンは、余計に怒りを露にして、怒鳴り散らしている。力を込めた腕を震わしており、今にも殴りかかる寸前だ。

 「…先にしてたのはアンタでしょうよ。」

 「そうだ!…そうだ!」「いい加減にしてほしいです。」

 またしても、他の冒険者から野次が飛ぶ。

 「ノイマン、駄目だってば。…皆も彼を煽るのは終わりにするんだ!!」

 それでも好青年だけは、尚も場を取り成そうとしていた。

 「まだ懲りておらぬか、…救えん奴じゃな。…そんな蛮骨さだから無様な姿を晒すんじゃよ。…お前じゃ、ヒルフェ坊っちゃんには、到底敵わん。…じゃから、お偉いさんの前で恥をかかさないでほしいわい。」

 しかしフォン支部長が遮ぎり、ノイマンへと叱責する言葉を浴びせかけた。

 「なんだと!!…ふざけるな!!…そのジジイがどれだけ偉いのか凄いのか知らねぇ!!…それに腰抜け野郎の孫なんかに、おいらが負ける訳ないだろうが!!」

 案の定、ノイマンは反応を示して、馬鹿にしてくる様な発言をしてきたのだった。

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