さん

 .





“からす なぜなくの”


 題名は知らないあの歌のカラスは確か子どものことで鳴いていたはずだ。

 でも、ボクの場合は“鳴く”んじゃない。

 涙を流して“泣く”んだ。


 夜羽ようちゃんを呼ぶために鳴くんじゃない。

 夜羽ちゃんという大切な人を失ったから泣くんだ。



 ボクは1日中、声を上げて泣き続けた。

 人にしてみれば、「カーカー」と鳴いてるように聞こえるだろう。

 でも、前に夜羽ちゃんが言ってた。


「どう鳴こうが、そんなのカラスの勝手でしょ」


 そうだよ、なくのはボクの勝手でしょ?

 “鳴く”にしても“泣く”にしても、なくのに理由は必ずあるんだから。

 理由もなく、なくカラスなんて1匹もいないんだよ。


『ソレジャア ボクハ イッタイ ナンノタメニ ナイテイルノ……?』


 夜羽ちゃんがいなくなった悲しみを忘れるため?

 そんなの全然違うよね……。


 答えが分からないまま、大空を飛ぶ毎日。


 大空を飛んだって、答えや夜羽ちゃんが見つかる理由も何も変わらないけど、夜羽ちゃんを失ってからボクには大空を飛ぶしかなかった。


.

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る