【完結】クロウの答え

かがみゆえ

いち

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♪ かーらーすー なぜ なくのー? ♪


 題名は知らない歌だけど、“夜羽ようちゃん”が毎日ボクのために歌ってくれた。


和夜かずやの歌だよ」


 歌い終わる度に、いつも笑って夜羽ちゃんが教えてくれた。

 “和夜”というのは、ボクの名前だ。

 夜羽ちゃんがボクのためにつけてくれた、大切な名前だ。


 ボクには大好きなものが3つある。

 1つ目は、題名は知らないあの歌。

 2つ目は、“和夜”というボクの名前。

 3つ目は、夜羽ちゃんだ。


 夜羽ちゃんはボクの初恋の人なんだ。


『ヨウチャン ダイスキダヨ』


 でもね、ボクの恋は決して実らないんだ。

 夜羽ちゃんに彼氏がいるとか好きな人がいるとかじゃない。

 だってボクは、夜羽ちゃんと同じ人間じゃないから。

 それに、恋が実る実らないの前にボクは言葉を喋れない。

 だから、この想いは絶対に伝わらないんだ。


 でもボクは、夜羽ちゃんに想いを伝えられなくても今すっごく幸せだ。

 だって、夜羽ちゃんが毎日ボクに会ってくれるから。

 1日にあった出来事をボクに楽しそうに話してくれて、必ずその後に題名は知らないあの歌を歌ってくれるから。


 夜羽ちゃんが、ボクの全てだった。

 夜羽ちゃんの右肩が行き場を無くしたボクの唯一の居場所だった。


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