青空が見れなくなったら

紫月美夜

第1話 

いつからだろうか。青空に対して「ウザイ」と思うようになったのは。薄暗くて今にも泣きだしそうな色の空を好むようになったのは。


大学に入学して早1年。将来は教師になるんだと思い、入学した教職課程のある文学部。専門的な知識を身に付け、いつかはそれを生徒たちに伝えたい!当初は確かに心が躍ったのだ。ああ、受験に合格し、夢を叶える第一歩を踏み出すことができた!僕は確かにそう思った。この大学は教職課程を履修する人が多いらしい。どれほど熱い思いを持った仲間と出会えるだろうか、心躍らせながらあの門をくぐったことは覚えている。

だが、実際はどうだ。教職課程を履修する同級生達は楽単を探し、授業はサボり、不正出席を繰り返す。これから教師になろうとしている奴らがだぞ?僕は不思議でならなかった。真面目過ぎると言われたことは多々あるが、今回ばかりは奴らが不真面目過ぎないか。今日も「静かにしてください」と弱々しい声が教室にこだまする。おい、教授よそれで良いのか。もっと強く言ってやってくれ。あれは不正解、僕のように真面目な奴が正しいと言ってくれ。


良い奴だと思っていた友達に僕の心の内を打ち明けてしまった。あの時のこいつ面倒くさい奴だなという顔は忘れない。「大学生って、そんなもんじゃね?あんま気負ってると疲れるぞ」そうか、僕が夢見ていた大学生は”こんなものなのか”。


僕はその日、初めて授業をサボった。奴らを目にして、”こんなものなのか”と感じるのが嫌だった。僕はその日、雨も降っていないのに傘をさして帰った。僕はその日、まばゆいくらいに自分を照らす空の光が、眩しい夢と重なって嫌になっていた。

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