第359話 道中での騒動
王都まで半分くらいの距離まで来た頃だろうか、今まで見たものとは明らかに様子の違う集団が外道の脇に馬車を停めているのが見えた。
「おい、そこのテイマー!!」
周りを見渡すがテイマーらしき人は私しか居ない。
「私ですか?」
「お前以外に誰が居ると言うんだこの鈍間め!」
カチーン。
はじめましてのおっさんに鈍間と言われる筋合いは無いんですが?
「申し訳ないですけど私達は鈍間では無いので失礼します。」
ギラギラに着飾っている感じから貴族であろうおっさんに背を向けてまた王都への道を進もうとしたところ、
「王都に向かうおつもりなのでしたら、この先の道に
そう声をかけてくれたのは失礼なおっさんではなく、大きな商会の商会員らしき男性。
「
「えぇ、5日前からこの先の道に座り込み、動かないのです。体長20mは有る大きなドラゴンでどうにも出来ず立ち往生しているところです。」
状況を説明してくれた商会員らしき男性はモーナ商会の代表モルモーナさん。
商会員ではなく、商会長だった。
店舗を持たず、街から街へと移動しながら商売をする方らしい。
王家管理のダンジョンが開放されるのに合わせ、人が集まる王都で商いをしようと向かっていたところらしい。
「一応、ダンジョンの街エテルシュテルケの冒険者ギルドへ使いを出したのですが、それが2日前です。」
「2日前って、なら使いの方は今頃街に着いたころじゃ。」
なんでもっと早く助けを求める使いを出さなかったのかというと、
各馬車、護衛として冒険者に依頼を出していたり、自分のところの護衛騎士を連れているのだが、人を使いに出すという事は自分達の守りの1角を手放す事になる。
使いといえど、魔物が全く出ない安全な道を行く訳では無いため、それなりに自衛が出来て最低限の休憩で動ける体力も必要になるのだ。
結局、先程の失礼なおっさんをはじめとした貴族連中は誰ひとり使いを出すとは言わず、言わない癖に早く道を通れる様にしろと護衛を依頼された冒険者達に突っかかっているらしい。
「埒が明かないのでうちの護衛の冒険者からエテルシュテルケの街へ使いを出したのですが。」
「それが2日前、皆さんは5日ここに居ると。」
「えぇ。」
「食料や水はどうされているのですか?」
「貴族の方の馬車が多いですし、荷物は多い筈ですから制御すれば5日経った今でも大丈夫な筈なのですが…。」
「こういった非常事態でも我慢せず食べたい分だけ食べたがる方のせいで食料も危ないと。」
「既に私達の荷物の食べられる物も殆ど彼等の胃袋に収まってしまっています。」
なんと横暴な。
確かにモルモーナさんとその護衛をしているという冒険者達の疲労感は凄そうだし、こころなしかげっそりとして見える。
だけど貴族の連中は護衛騎士含めげっそり感は無い。
本当に貴族なら何でも許されると思ってるのだろうな、こういった奴等は。
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