第9話ぐちゃぐちゃな部屋

 祥子はダルそうにしながらも、この目の前の女があっさりと引き下がるとも到底思えなかったため致し方なく可憐の話を聞くことにした。


 可憐に連れられて、駅近くのカフェまで来た二人だが雰囲気は最悪と言っても良いほど険悪だった。


「...........それで、何を聞きたいの?忙しいからあんまり時間を使いたくない」

「大丈夫、すぐ終わるから。私の聞きたいたい事はあんたが悟を監禁してるんじゃないかって事」

「..............」


 可憐が言ったことに対して、祥子はわずかな時間だが頭を巡らせ考える。


 きっとこいつは悟が今何処で何をしているかを分かっていない。それにその情報を持っているのは自分だけ。それに可憐だけではなく他の女も恐らく今の状況を理解していないと祥子は考えた。


 ここで馬鹿正直に悟は変な女に攫われたなんて言ったところで、自分の優位性は失われてしまう。かといってその返答に頷いてしまったら可憐たちが意地でも奪い返そうとする。何ならこの会話が終わった後に自分の家まで粘着するだろうというのは容易に考えられる。


 それに下手な受け答えをして、嘘が看破されれば面倒くさいことになるのは確実な為嘘はつかず微妙に濁した解答をすることにした。


「…私は監禁なんてしてない」

「じゃあ、悟の居場所は知ってるの?」

「さぁ?分からない」


 祥子の答えに対して可憐は頭に血が上り、思わず先ほど頼んでおいたカフェオレを祥子の顔めがけてかけてしまおうかと思ったが、そんなことをすれば悟が良い顔はしないだろうと震えを抑え、一口カフェオレを口に含んで落ち着く。


「...........本当に監禁はしていないの?」

「…してないって言ってる」

「あんたが嘘を吐いている可能性もある。だから、確かめさせて」

「..............」


 再度、祥子は考える。可憐からの信用何て毛ほどの価値もないと思っている祥子だが、可憐がこれから先何度も自分をストーカーしてくると考えられる。


 今は、あの女の事、そして悟が何処にいるのかをいち早く探さなければいけない状況にある。ならば、早めにこの事案を処理したほうが良いと考えた祥子は仕方がなさそうに頷いた。


 頼んだものを飲み終わった後、祥子の後についていく可憐の心境はかなり複雑なものだった。

 

 これで祥子の家に悟がいなかった場合、本当にあてが無くなってしまうからである。それに祥子の様子を見ても焦ってる様子は無く、本当に祥子の家には悟がいないような気がするからだ。


 きっといるはずであると信じることで自分の心を落ち着かせる可憐だったが..............


「ほら、悟はいないでしょ?」


 祥子の家に入り、どの部屋も見たが悟の姿は無かった。


 思わず取り乱し、部屋の中を隅々まで探したものの残ったのはぐちゃぐちゃになった部屋だけだった。


—————————————————————


 今日はもう一話出します

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る