第34話
「ソフィア、
まず落ち着こう。
ジュリアンは、
別にストーカーじゃないよ?」
「え、違うの?
1人で追いかけてきたから
てっきりストーカーになってるのかと。
びっくりした。」
「おーい!」
ルァントは放置されてしまったことに
腹立たしく感じていた。
「ひどい…。
善意の気持ちで助けに来たというのに。」
フィンレーはジュリアンの背中をなでた。
「さっきから何してるんだって!!」
ルァントの怒りは最上級だ。
ドラゴン2体に指示を出して、
炎と冷気のブレスを放った。
辺り全体に
ふりまかれたため、
上につるされた凍った球体から
レクエペとケラットが溶けて、
下に落ちて来た。
「大丈夫か?!」
フィンレーは2人に声をかける。
「…ええ、何とか。」
「ちょっと、待って。
まだもう一つ残ってるわ。
スカーレット!」
ソフィアは上の方を指をさすと、
膝を抱えて丸まった状態の
スカーレットが凍っていた。
まだ溶けてないようだ。
「どうすれば?!」
『ファイアロー!』
少し元気を取り戻したジュリアンが
魔法を唱えた。
炎の魔法で溶け始めた。
落ちてくる真下に駆け寄って、
ジュリアンがお姫様抱っこで
救いあげた。
「…あ、ありがとうございます。」
スカーレットがやっと元に戻って
みんなが安堵した。
「レクエペ!
弓矢持っているか?」
フィンレーが小人のレクエペに聞くと、
背中に隠し持っていた折りたたみの弓矢を
取り出した。
「こんなこともあろうかと、
きちんと背中に隠しておきました。
ケラットの短剣は、
没収されてしまった
ようだけど、私のは無事だったよ。」
「ずるい…。レクエペだけ。」
「まあまぁ、そういわずに
んじゃ、早速、弓矢装備して、
あいつの紋章ねらって打ってくれない?」
「紋章?
あの腕に着けてる
緑のリストのことですか?」
ルァントの腕を指さしては、フィンレーは
レクエペに攻撃の指示を出す。
「そう。頼むよ。」
「承知しました。
お任せください!!」
矢を引き抜いては、弓にセットして、
狙いを定めては、翡翠の紋章に目掛けて
放った。的中率抜群のレクエペ。
そこへ、ジュリアンが、スカーレットを
介抱していると、レクエペが弓でルァントの
紋章に矢を放とうとしているのが見えた。
「やめろー---!!
狙うんじゃない!!」
ジュリアンが手をのばしても、
時はすでに遅し。
こういうときも命中率が良いレクエペ。
ルァントの隙を見て、紋章に矢が放たれた。
強い緑の光が太陽のように輝きはじめ、
辺り全体が光りで見えなかった。
みな、目が眩んだ。
「うぉおあああー---。」
強い光をもろに受けたルァントの目は
見えなくなっていた。
意識ももう、
こちらに攻撃する余裕もなさそうだ。
そんな姿を見ることもできずに
次々と倒れては、みんな目を塞ぐ。
壁に伝って場所を把握しては、出口を探す。
「みんな、大丈夫か?!」
フィンレーが叫ぶ。
「だから、言ったんだ。
翡翠は、壊してはいけないって!?」
「どういうことだよ?」
「私も知らないわ。
ジュリアン、どうなるの?」
「もう、無理だ…。
崩れるぞ!!
早く逃げろ!」
光を避けながら、
出口に向かって走りだす。
だんだんと柱からぽろぽろと崩れている。
天井からヒビが入る。
なぜか、サングラスをつけていた
オピンニクスが、大きな翼を広げて
勢いよく飛んだ。
みんなを背中に乗せた。
「早く乗るんだ!」
「なんで、サングラスつけてるんだよ。」
フィンレーが、悔しいそうに言う。
「助かった。とりあえず、
崩れる建物回避はできるが…。
それでいいのか。」
ジュリアンはほっとしていたが油断はできない。
「待て待て待て!!
後ろからなんか来る!!」
「体縮ませて!!
ぶつかるわ。」
ソフィアが叫んだ。
後方から、大量のコウモリが飛んでくる。
出口の方に飛び去って行く。
スカーレットの隣にジュリアンが座り、
レクエペとケラットは、
オピンニクスのふわふわの
毛並みに捕まっている。
フィンレーとソフィアは、
オピンニクスの顔付近に
座っていた。
なぜか、いつの間にか
正気に戻っていたホワイトドラゴンと
レッドドラゴンはオピンニクスに平行して
静かに飛んでいた。
そもそも、召喚獣たちの
戻る宝石が無い。
一体どこにあるのやら。
ドリュアデスとタイムは、
空中に飛ぶみんなの下を
ずんずんと歩いていた。
召喚獣のためか、翡翠の光の影響は
受けていなかった。
「油断できないわね。
まぶしいし。
崩れるし。
出口まで無事にいけるかしら。」
「あ、危ない!!!」
天井の壁が崩れてきた。
左に体を傾けて飛ぶが、
小人のレクエペとケラットが落ちそうに
なっていた。
ジュリアンが手を伸ばして、
レクエペを救ったが、
さらにケラットの手をつかんだ。
どうにか持ち上がった。
お城の大きな出入り口の扉に着いた。
だが、逃げることはできそうもない。
大きなクロマティックドラゴンが、
番人のようにどかっと座っていた。
5体の頭をこちらを睨みつける。
倒せなかったドラゴンとの2回戦目だ。
「ボス戦ってこと!?」
「本気出して、次は倒すぞ。」
「見たこともないドラゴンだな。」
ジュリアンは息をのむ。
遠くまで逃げて来たからか翡翠の光の
ダメージは軽減されていた。
オピンニクスの体から降りて
それぞれ持っている武器で戦闘態勢に入った。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます