第15話
だだ広い草原のフィールドに
3人は荷物を持って、進んでいた。
風が草木を揺らしている。
空はもくもくと入道雲ができていた。
オピンニクスに乗って移動しようとしたら、
戦いしすぎて疲れたといわれて、結局のところ
徒歩で移動することになった。
次の目的地までは半日ほどかかりそうだった。
「もう、一緒に来てしまってるけどいいわけ?
ソフィア王女。」
「ちょっと、やめてくれない?
私、王女になりたくないって言ってるじゃない。
一般庶民に紛れ込んで過ごしたいの。
戦争に巻き込まれたくないわ。」
「大変ですね。王女の仕事も。」
スカーレットがつぶやく。
ソフィアは、鼻息を荒くして、
フィンレーの後ろを歩く。
「次は、どこを目指してるの?」
腕のリストをタップして、
透明なウインドウ画面を開いた。
マップの中には赤と青の区別された町や村、
洞窟、城などのダンジョンが表示された。
「マップを見てみたんですが、
この先にある【金の池】が赤くなってるので、
そこのモンスターを調べます。」
「俺たちが倒してきたところは青くなってるか?」
「うん。そうみたいだね。
ミッション完了してる。」
「そのミッションを完了すれば、昇格する?」
「とりあえず、これをやってきてくれって
指示されたんだ。」
「そ、そうなのかな。
私、騎士の昇格試験みたことないけど、
コロシアムみたいなところで
戦って倒してからだったような気がするけど。」
「え。俺たち騙されてる?」
「わからない。
システムが変わったのかもしれないな。
余計なこと言ってごめんなさい。」
スカーレットとフィンレーは顔を見合わせる。
「そしたら、このミッションを終わらせたら、
コロシアムで戦いがあるってこと?
いよいよ、本格的な試験ってことね。」
「マジでわくわくしてきた。
早く戦いたいわ。
でも、魔法の数が少ないし、
召喚獣1体では太刀打ちできないか?」
「確かに。レベル上げと召喚獣を
見つけないといけないわね。」
「まさか、やる気出すとは思わなかったわ。」
ソフィアは怖がると思ってひやひやしていたが、
むしろウエルカムだったことに拍子抜けしていた。
「当たり前よ。戦いを怖がってたら、
騎士になれないっての。」
「それもそうね。」
「ほらほら、次々行きましょう。」
スカーレットはさっきよりも増してやる気に満ち溢れてきた。
□◇□
神聖な空気を漂う金の池にやっとの思いで到着した。
ここにも、モンスターが出現するとなっている。
「ったく、忙しいったらありゃしない。
あっちもしてこっちもして…
手がいくつあっても足りないわ!!
……きゃぁ!? 人間?」
金色に輝く池の周りを歩いていると、
目の前にエプロンをつけた小人が大きなかごを持って
歩いていた。
「なんだ、これ。人間にしては小さいな。」
フィンレーはしゃがんでのぞき込む。
スカーレットは、ソフィアと一緒に様子を伺っていた。
「人間!? 3人も。
これは大変だわ。
みんなに知らせないと、狙われちゃう。」
おかあさんスタイルの小人は、
持っていたかごを投げ捨てて、
あっちに行ったり、こっちに行ったり。
フィンレーは物珍しいものを見ると
すぐつかむくせを持っていた。
「うひょー、本当に小さな人間だわ。
すごい精密。機械じゃないし。」
シャツを指でつまんでジロジロ3人で見る。
「きゃー--つかまないで。
ロボットでもないし、人形でもないわ!!」
「何をする!?」
遠くから声がした。
すると、フィンレーの手に小さな矢がささる。
つまようじの細さだ。全然痛くない。
「うわ、矢も小さくてかわいいわ。」
「レクエペ! 安易に攻撃してはダメよ。」
フィンレーはつかんでいた小人を
そっと地面に離した。
一目散に逃げていく。
物陰に隠れていたもう一人の小人が
弓を持っていた。
男性のようだった。
「ケラルトは、隠れていろ。
危ないから。」
レクエペという弓を持つ男は、
フィンレーがつかんでいた小人に叫んでいた。
名前はケラルトという。
ソフィアとスカーレットはお人形のように
小さくてかわいい2人に興奮していた。
フィンレーもなんだかドキドキし始めた。
池はずっと金色に照らされている。
夜空には三日月が光り輝いていた。
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