未確認飛行物体14
「/#&!/;(@);&¥」
再びあの声と言葉が聞こえるが依然と何を言っているのかは不明。
だが先程と違い今度はその何者かの姿がハッキリと見えていた。
背の低い体には頑丈そうな鎧を身につけているが、一方で露出した顔。皮膚は緑色で髪の毛はなく後頭部が異様に長く大きい。黒目で染まった目は人より大きく、逆に鼻と口は少し小さい。
それは彼らからすれば目を疑うような異形の姿だった。
「お前が上に乗って来た奴か?」
「&(/“”?!,&’」
アーサーの質問に対し答えているのか、またあの言葉を発するがその意思は分からぬまま。
するとその生命体はもう片方の手に黒い魔力のようなものを溜め始めた。ドス黒く恐怖の象徴のような色。
それを目にしたアーサーがすぐさま二人の元まで退き、アメリアは既に術を唱え始めていた。
一方、生命体は手の上で徐々に大きくなっていく塊が野球ボール程度になるとその形を細長い菱形に変形させ、次の瞬間には光の如き速さで上へと消えた。
そしてそれが消えた直後、アメリアが術を発動させると三人は水色の半透明なドームに覆われた。
「少し感じが違うけどあれは魔術の類だと思います」
アメリアはそう言うと上を見上げた。
「来る!」
彼女の言葉通り崩れ落ちた天井からは無数に増加した先程の菱形が雨のようにドームへと降り注ぐ。
だが菱形はドームに当たる度に雫が地に落ちるように消えていく。
再びアメリアの防御魔術に助けられたと思ったその時――ドーム中心に罅が入った。それを見たアメリアがすぐさま掲げた魔杖から放たれた水色の魔力は、柱のようにドームへ吸収されていき、それに合わせ修復されていく罅。
しかしそれを上回るの速度で至る所に新たな罅は出来ていった。
「っ! これ以上は」
その言葉の直後、ガラスが割れるのと類似した音と共にドームは砕け散った。
アーサーはドームが割れた瞬間、アメリアへ向かって走り出すと降り注ぐ菱形を剣で弾きながら彼女を安全な場所まで一気に運んだ。
「マルク!」
「はい」
アメリアを助けたアーサーの声にドームから離れていたマルクは聖剣を抜き生命体に向かって走り出す。生命体に辿り着くまでの間に聖剣には光が集まり剣身を二倍へと膨れ上がらせた。
そして床を一蹴し大きく跳んだマルクは両手で光に包まれた聖剣を振り上げる。マルクは力の限りを尽くし生命体へ聖剣を振り下ろした。
だがしかし生命体は悠々と顔を上げると片手を顔先へ。そして聖剣を何てことないと言わんばかりに受け止めた。それと同時に聖剣に纏った光が弾けるように消える。
「なっ!」
驚愕のあまり言葉すらまともに発するとが出来ないマルク。
そして彼の理解が追いつくより先にもう片方の手が翳されるとマルクの体へ衝撃が走り、気が付いた時には吹き飛ばされてしまっていた。宙を飛んだマルクは地面に叩きつけられながらも体勢を立て直し、その隣にアーサーが並ぶ。
「奴の隙を見つけ次第頼むぞアメリア」
「はい」
一歩後ろにいたアメリアの返事を聞いたアーサーは隣で片膝を着くマルクを横目で見下ろす。
「まだいけるな?」
「もちろんです」
アーサーの言葉に立ち上がるマルク。
「よし。俺とお前で奴の注意を引く。あとはタイミングを見計らってアメリアがやってくれるはずだ」
「分かりました」
「行くぞ」
そして先に走り出したアーサーと共にマルクは生命体にへとかっていった。
生命体対アーサーとマルク。その戦闘はすぐさま激しさを見せる。マルクは聖剣の力を使い、アーサーは騎士王たる所以を知らしめるかのように四方八方から容赦なく剣を振るった。
しかしその戦いは一見互角のように見えたが、生命体に対し二人の剣は当たるどころか掠りもしていない。それだけではなく生命体は最初の場所から一歩も動いていなかった。
だがそれはアーサーとマルクが手を抜いているというわけではなく、生命体と二人との間にある実力差の表れ。
「(強い。もしかしたら本当にあの魔王よりも強いかもしれない)」
隙を突こうが背後から剣を振り下ろそうがまるで知っていたと言わんばかりに防がれ続け、マルクは生命体の強さを身に染みて感じていた。
すると最初の方は防戦一方だった生命体は突然反撃をし始める。といっても直接的な攻撃ではなく掌に球体として溜めた黒い魔力のようなものを押し当て吹き飛ばすというだけのもの。吹き飛ばされた二人は壁や柱などに叩きつけられるが、すぐさま立ち上がると剣を手に走り出す。
それから暫くは一歩も動かない生命体の一方的な戦闘が続く。
そして正面から同時に斬りかかったアーサーとマルクの剣を片手で止めた生命体は二人を一気に吹き飛ばした。シンクロしながら空中で一回転しアメリアの手前に着地する二人。
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