「これ以上の転生は無理です。」悪役令嬢は溺愛される

七西 誠

第1話 オープニング

1 オープニング



「アーネスト様、レオンハルト公爵様との婚約を解消なさって下さい。」


リーランド帝国の帝都にある帝国が運営する学園の卒業パーティで、シャルロット侯爵令嬢が

レオンハルトの隣に立って、泣きそうな声で告げた。

潤んだ瞳で上目遣いにレオンハルトを見上げ、レオンハルトの代弁をしたのだ。


   ***



一ヶ月前・・・


レオンハルトは、アルベルト公爵の家を継いで間もない。


もうすぐ卒業なので、領地に戻り会えなくなる友人達との思い出を作り

領地を運営するにあたり人脈を作る為にも、タウンハウスでティーパーティを開催した。

卒業生では無いけれど、婚約者のアーネストも招待客の1人である。


アーネストはハニーピンクのふわふわの髪、水色の瞳で陶器のような白い肌。

誰もが見とれる程の容姿をしている。


何かにつけて、アーネストとお近づきになりたい令息たちが幾重にも取り巻いていた。


レオンハルトは、アーネストの事を気にしつつもホスト役をこなし

シャルロット嬢とその取り巻きに囲まれて、お茶を飲んでいた。


シャルロットも美人で人気もある令嬢である。金色のストレートの髪が自慢だ。

ふわふわと可愛らしいアーネストに比べ、シャルロットは凜々しく美人なタイプである。


「あら?・・・雨かしら?」シャルロットが手の平を上に向けると

空は明るいのに、ポツリポツリと雨が降り出した。お天気雨の様だ。


皆がすぐ近くにあるガゼボに避難をしていると

アーネストは、貴族令息の2人に上着を掛けられ、庇われる様にガゼボに入って来た。

少しだけ濡れた前髪が気になるのか指で直す仕草をすると、その愛らしさに

令息達から溜息が漏れた。


シャルロットは横目でチラリと見て、早く計画を実行したい・・・と思いながら

「レオンハルト公爵様、あまりお気になさらずに・・・」と声を掛けると

一緒に居た令嬢達が非難するような目でアーネスト達を睨みながら

「そうですわ。」とシャルロットに同調する声を上げた。

シャルロットにも、多くの令息令嬢が取り巻いていた。



幸いな事に雨はほんの少しの通り雨だったのだが、優秀な侍従長を中心に侍女達がティーパーティを

庭園の温室で再開できる準備を整えていて、少しの時間の中断で場所を新たに、また楽しい時間に戻る事が出来た。


レオンハルトは内心はハラハラしていたが、アーネストの様子を伺いながら

それでも公爵として、顔には笑顔を貼り付けて貴族としての振る舞いをしながら

つつがなくティーパーティを終了する事が出来た。



「今日は楽しい一日でございました。レオンハルト様。」

シャルロットが代表して、レオンハルトにお礼の言葉を述べた。


パーティを解散した後、レオンハルトはアーネストに

「大丈夫か?」と小声で聞いた。


「はい。」

アーネストは、微笑みながら答えた。



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