第26話 強襲(中編)
そうして次々にヒューマノイドが倒されていく。その数が半分くらいになったところで、突如全体としての動きが変わった。
「あれ、こいつら引き上げていくぞ!」タクヤが叫ぶ。ヒューマノイドは攻撃の手を止めて、基地の方へと戻り始めた。その流れとは逆に基地内から出てくる二つの人影があった。それはゆっくりと五人のいる方へと歩いてくる。
「出てきたな」タニグチが呟く。
「あれがさっき言ってたプロトタイプってやつか?」ファティマが聞く。
食後にトニーの入れてくれた紅茶とファティマの焼いてきたアップルパイをつつきながら、タニグチはノルンとファティマにその存在について説明していた。ヒューマノイドの中にはプロトタイプという個体が存在している。
オメガのどこかには、マシーンによる全ての戦闘データを共有解析するセンターAIが存在し、攻撃でも防御でも敵に対しての対抗策がプロトタイプと呼ばれる個体に施される。それが実戦で有効だと分かれば、量産機にも同じ装備が追加されるのだ。
プロトタイプはその存在が現在の所八体確認されている。それらはセンターAIに繋がりつつも、個別のAIも備えていて個性付がされている。装備が同じでも、行動にバリエーションを持たせることが目的の様だ。八体は人間のようにイチローからハチローと名付けられている。
「二体もいたのか。ありゃサブローとハチローだな」タニグチがそう呼んだ二体は、他のヒューマノイドと違って、顔の作りなどは人間に近い。プロトタイプは体格も人それぞれが違うように機体にバリエーションを持たせてある。顔の造りも違う。しかし体表面は他のヒューマノイドと同じく黒い装甲に覆われている。
「先手必勝!」そう言ってタクヤが銃でやや背が高くて細身の方を撃った。しかしその弾は炭素繊維の装甲を貫くことは無く、表面で止まって爆裂した。
「なんだよ。ナユタのみんな。久しぶりに会ったっていうのに酷いじゃないか。でもこれで分かったろう?もう君たちの電磁加速砲は僕らには通用しないよ」撃たれた方のヒューマノイド、ハチローは流ちょうに人間の言葉でそう言った。もう一体、サブローの方は更に前に進み出て
「うん。私達はね。あなた方の命をとりたいわけでは無いんだよ。おとなしく投降してくれないかな。そちらの攻撃は私とハチローには一切効かないって分かりましたよね。じゃあどうにもならないでしょう?投降するのが嫌だっていうなら、殺すしか無くなりますな」と言った。
「あの小太りの方がサブローで、細い方がハチローだ。どうやら俺たちの銃には耐性をつけてきたらしいな」タニグチが言った。
「ナユタってなんだ」ファティマが聞く。
「僕ら五人の通り名みたいなもんさ。かっこいいだろ?」タクヤが答える。
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