第13話 ユーエフティユーゼル

大腸がん手術→肺転移→FOLFOX+アバスチン療法→肺転移手術→腹膜播種→手術


たった2年半の間に起こったことだ。


腹膜播種手術後は当然のようにユーエフティー+ユーゼル療法という経口型の抗がん剤が始まった。


再発防止、手術で取りきれなかったがん細胞を死滅させる効果があるというこの薬の服用はわりと一般的で、腹膜播種は全部取り切れる可能性が低いのだから当然の治療法だったと思う。


何より、腹膜播種を切除する手術を行ってもらえたことに本当に感謝している。


しかし、何故最初の手術後にこの薬の服用を勧められなかったのだろうか・・・


そこが思い出せないのだけど、私達夫婦は最初の手術のとき、まったく転移なんてことを思いもしなかったし、医師もこの患者なら大丈夫と思ったのだろうか・・・

抗がん剤があまりにも高額なので、はなから選択肢に入っていなかったのだろうか・・・

医師は勧めてくれたのに、そんな高い薬無理です!副作用があるなんて絶対嫌ですと拒否したのだろうか・・・


いずれにしろ、今更何故あのときに、と言ってみても仕方ない。


すべてが起こるべきして起こっているのだから。


4週間服用して1週間休み。

体重によっと量が決まるけど、1日3回8時間空けて、しかも食事の前後1時間を避けて飲むのだからコントロールがとても難しかった。

薬なんて殆ど飲む事無く今まで生きてきたので、まず服用するということを日課にすることが大変だった。

最初カプセルタイプのものを処方してもらってたけど、飲み込むのが辛く顆粒タイプに変えてもらったりもした。

今回の転移でかなり危険な状態だと言う事は能天気な私にも十分痛いほど理解できていたので、しっかりと真面目に服用した。


玄米菜食の食事を摂ることと、抗がん剤を飲むこと、これが私の仕事なんだと言い聞かせ、体を完全にリセットするイメージを強く持った。夫も飲み忘れてないか頻繁に確認してくれた。


副作用は比較的少ないですと聞いていたのに、個人差もあるのだろうけど、かなり辛かった。


まず、一番嫌だったのが味覚障害。口の中がざらざらで口内炎もいっぱいでき、何を食べても化学調味料みたいな、合成甘味料みたいな味がするようになった。


そして、お腹の調子がひどく悪くなり、常に下痢・・どこへ行くにもトイレの心配をしなくてはいけなくなった。


あと、貧血と倦怠感。これは仕方ないなと諦め、付き合うしか無いと言い聞かせてたのけど、体調が悪い、というのはこういうことなのだと思い知らされた。


だけど、この治療法によって生活の幅を縮小させることなく、以前に増して活発に旅行や音楽活動をして生き生きと暮らせたのは、本当に夫のおかげなのだ。


病気に負けることなく、病気に支配されることなく。


お薬手帖を見ると2011年、1月から抗がん剤が始まり、2013年2月で終わってる。


最後の何クールかは、2週間服用1週間お休みというサイクルに減らしてもらっているけど、


夫に支えられてよくがんばったと思う。


その治療の間、私達は20回のライブ活動をして、3回の海外旅行を楽しんだ。国内旅行にも何度も連れて行ってもらった。


とても色濃く生きた日々だった。

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