第30話 妖精の住処



《有間愁斗―視点》



 暫く抱き合って、彼女の頭皮の匂いを嗅いでいたら大分落ち着いてきた。


「紫陽花の匂い……安心する」

「そうなんですか?」

「うん」

「私も有間さんの匂い安心します……」

「匂いフェチカップルだな」

「ぷ、ふふふ、そうですね」


 嬉しそうにしているぞ。

 俺は彼女の背中に回した手で後頭部優しく撫でた。


「有間さんって何でもできて凄いですよね。Wi-Fiだって……、業者さんも直せなかったのにビックリしました」

「会社ではラインロボをいじってるけど、学生のときは住宅設備を勉強してたからね」

「ほんと凄いですよ。お姉ちゃんもお母さんも褒めてましたよ」

「なんか照れるな。機械いじり以外は何も知らないから。……あんな面白いアニメあるなんて知らなかったよ」


「続きいつでも見ていいですからね。あの、有間さん……」

「ん?」

「どうして昨日と一昨日お店に来なかったんですか?」

「えっとそれは……」

「まぁ前から毎日来てたわけじゃないですけど……」

「昨日も一昨日も会社の先輩にご飯誘われて、ラーメンとか定食食べに行ってたんだ」


 麻莉ちゃんと飲み会のセッティングを頼まれてたとは言わない方が良さそうだ。断ったしな。


「私も有間さんの知り合いに会ってみたいな」

「むさい男ばっかりだよ」

「だって、ボイレコ聞くと凄く楽しそうに話してるから」


 あれは麻莉ちゃんのトークがパないというか、存在が下ネタとうか……。


 俺は紫陽花から少し離れた。


「そう言えばさ、今週の土曜日は横浜の水族館に行く予定だったじゃん」

「そうですね」


 土曜日は水族館に行って横浜の中華街で夕食を食べ、その後夜景を見る予定だった。

 恋愛ビギナーの俺は彼女と何をして良いかわからず、ネットであれこれ調べてデートプランを考えている。


「でも、仙台旅行に行けるなら向こうに水族館あるから、土曜日は上野でご飯食べない?」

「いいですけど、上野って何かあるんですか?」

「大学時代の友達がJAZZバンドやってて、今週の土曜、上野のJAZZクラブで演奏するんだよ。前に誘われたんだけど忘れた」

「有間さん、JAZZ詳しいんですか?」

「俺は全然詳しくないよ。ただ、仲良い友達だから誘ってくれると聞きに行ってるんだ」

「もしかして、私が有間さんの知り合いに会ってみたいって言ったからですか?」

「まぁそれもあるけど……、お店の雰囲気もいいし、そこJAZZクラブなのに料理に力いれてて、結構美味しいからどうかなって」

「私、アニソンとかホロライブの曲しか聞かないですけど、素人でも大丈夫でしょうか?」


 たまに知識マウントとってくるウザい客に絡まれたりするけど……。


「バンドやってる友達は俺が音楽に全く興味ないの知ってるし。そんな俺と一緒にいれば大丈夫」

「ふふふ、頼もしくないのか、頼もしいのかわからないですね」

「まぁ、Fly Me to the MoonとかCountry Roadとか古い名曲のアレンジもやるから聞いたことある曲もあると思うよ」

「Fly Me to the Moonは歌えますよ」

「えっ?そうなの?よくそんな昔の曲知ってるね」

「昔のロボットアニメのエンディングで使われてて、いい曲だから英語の歌詞覚えたんですよ……


 ♪ Fly Me to the Moon ♪ ~~ ♪ ~~ 」 


 紫陽花はアカペラで歌い始める。

 囁くような甘い歌声は鈴音のように澄んでいて心地が良い。


「こんな感じですよね?」


「凄い!歌上手いね。めっちゃ綺麗な声だった!よく歌うの?」


 僅か30秒程のアカペラだったけど本当に良かった。少し甲高くて癖のある声だからハマる曲を歌うと滅茶苦茶良いのかも……。


「友達とたまにカラオケ行きます……今度一緒に行きますか?私、アニソンばっかりですけど」

「ごめん、俺、歌とか苦手で知ってる曲も少ないから歌わなくていいなら……」

「じゃあ私がずっと歌いますね。ふふふ、たくさん歌えばストレス発散になりそう」

「紫陽花の歌声ならずっと聞いていたいよ」


 駅前にカラオケあるしな。酒飲みながら彼女の歌を聞ける。最高じゃないか!


 それから俺達は小一時間、今後の予定の話と雑談をした。





 スマホを見る。


「もう12時半か……、そろそろ寝ようか」

「有間さん、明日仕事か」


 紫陽花が体調不良でバイトを休むなら俺も有給を取ろうと思っていたが「元気だから行く」と言うので休むのをやめた。


「紫陽花だってちゃんと寝ないと元気にならないよ」


 彼女の額にキスをして、ベットから起き上がる。そのまま下に敷いてある布団に横になった。

 口にキスをするとまたセンシティブイチャイチャが始まってしまいそうだったので自重じちょうした。


「布団硬いし、ベットで寝ますか?」

「いや、大丈夫。少し硬い方が寝やすいから」

「……そうですか」


 ベットで一緒に寝たら興奮して寝れないよ。またおっぱい揉みたいし。ダメだ。寝よ寝よ。考えないようにするんだ。

 会社の先輩方の顔でも思い浮かべていれば眠くなるだろう。


「じゃぁ、おやすみ」

「おやすみなさい」




《砂月紫陽花―視点》



「有間さーん」


「……むにゃむにゃ、先輩もう飲めませんよ、むにゃむにゃ」


 小声で呼び掛けると寝言が返ってきた。


 有間さんは横になって10分くらいで眠ってしまった。寝付き良過ぎでしょ。羨ましいなぁ。


 まだ1時前で、いつも朝方寝るから全く眠くない。それにさっきアニメ見ながら寝たし。


 私はうつ伏せになってスマホを開く。



 暫くスマホを見てたけど有間さんがいると気になって、ずっと見ていられない。


 有間さんの横、安心するし、隣で寝ればすぐに眠れるかな?


 そう思ってベットから起き上がった。

 音を立てないようにそっと下の布団に移動して、有間さん腕が邪魔だから少しずらして、隣に横になる。

 仰向けで寝る有間の腕は上に上がっていて、横向きの私は有間さんの腋に鼻の頭とおでこをくっ付けた。


 有間さんの匂い安心する。

 有間さんってエッチだよね。男の人は皆そうなのかな?


 それから少し気になって、上半身起こし、有馬さんの股間を見た。すると三角形の立派なテントができている。


 えええっ!?男の人って眠りながら立つの?まさか起きてる?


「有間さーん」


「むにゃむにゃ、先輩もう食べれませんよ、むにゃむにゃ」


 寝てるわね。


 ……触ってみたい。でも、勝手に触ったら怒られるよね?


悪魔紫陽花「後学の為に触っときなよ。そのうちエッチするんだしさ。さっき胸触られたお返しだよ」


 でも……、勝手に触って有馬さんが起きたら、ヤバい奴って思われちゃうよ。


天使紫陽花「逃げちゃだめだ!頑張れ紫陽花!」


 二人とも煽ってくるの草。


 私は有間さんのテントの先っちょを指先でつついてみた。


 つんつん つんつん


 へぇー、こんな感じなんだ。


 つんつん つんつん


 結構硬いのね。


 つんつん つんつん ビクッ!


 きゃっ!怖い!テントが勝手にビクッて動いた!


 え?なに?なんで?中に小人がいるの?

 もうやめとこう……。妖精さんが住んでいたら驚かせちゃう。



《有間愁斗―視点》


 ええええええええええ!?

 俺の愁斗君、めっちゃつつかれてた!?

 危うく愁斗シュート君ゴールするところだったよ!?


 俺が寝ないと、いつまでも寝てくれないと思って眠った振りしてたけど……。女の子も興味があるのだろうか?


 紫陽花は飽きたのか俺の腋に顔を埋めて寝てしまった。


 ダメだ。ドキドキして眠れない。

 今すぐ紫陽花を抱きしめて滅茶苦茶にしたい。


 その後、紫陽花は直ぐに眠ってしまったが俺は明け方までムラムラして眠れなかった。











――――――――


 エロを書くとブックマークが減るんですけど、これからも書いちゃうと思います。すみません(;´∀`)

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