第30話 それぞれの決意
レーナにより、強制的に移動させられた面々は、広くない彼女の部屋に敷かれた大人1人が辛うじて寝転がれるサイズの、円形
円形
狭い場所にひっそりと寄り集まっている様子は悪巧みをしているようだ。
「いい? さっきの話だけど、あれはこの世界の
いや、レーナをモブだと信じ込ませる明らかな悪巧み真っ最中だ。
洗脳じみた大層な前置きのあとで、ようやくレーナは秘密としたい内容を語りだした。中途半端に知られているよりも、共通の常識として開示し、事実と異なること――例えば
それからレーナは改めて前世の記憶があることと、その知識の中身について話した。
曰く、この世界が乙女ゲーム『虹の彼方のダンテフォール ~堕ちる神と滅びる世界で、真実の愛が繋げる奇跡~』と類似した世界であること。
彼らが攻略対象と呼ばれる存在のうちの2人であること。
2年後にはヒロインとなる聖女が現れること。
そして自分は、ゲームストーリーの主軸には関係のない
「そっか! レーナは村の物知り爺さんみたいなものなんだな!」
ルビー色の目をキラキラさせて闊達に告げるアルルクに、レーナは微妙に引っ掛かりながらも「そうね」と相槌を打つ。聖女でもヒロインでもないレーナは、凄くなさを理解させるためには、物知り爺さん呼ばわりも享受するべきなんだろうと堪えたまでだ。とは言え、乙女を爺さんに例えるデリカシーの無さは、ヒロインに会うまでに是非直して欲しいとも思う。攻略対象として、2年後までにもう少し精神的成長を助けなければならないと、密かに心に誓うレーナだ。
「以前の話では、聖女と恋物語を繰り広げる攻略対象とやらが6人居るのだったな? それが、私と、そのアルルクだと言うんだな。そしてレーナは、恋物語には関係のない立ち位置であり、ただ最高神を探す旅に出たい――その理解で間違いないな?」
『もぉ既に破綻してるわよね』
真剣に重要事項を確認するように、レーナをじっと見詰めながらゆっくりと話すエドヴィンの肩の上で、
彼女の考えは全く分からないが、「形状の変化」と「分離」などと云うとんでもない迷惑を掛けた自覚もあるレーナは、批判的な言葉も甘んじて受け入れようと、じっと聞き入る。エドヴィンの確認事項も誤りはなかったので、神妙に首を縦に振る。
「そこで、だ」
内緒話をするように、円座の中央に顔を突き出すエドヴィンに釣られて全員が自然、前のめりになる。
「レーナにこれ以上攻略対象が近付かないよう……いや、レーナ自身が聖女に祀り上げられて、
「わたしとしては、全く異存はないわ。聖女にならなくて、旅に出られるフリーな
「良くわかんねーけど、レーナに 変な奴らが4人近付かない様にするってことだな。おれは賛成だ。おれはレーナを守る勇者だからな!」
『赤髪、意外にしっかり分かってんじゃないの。あたしも巻き込まれちゃったし、しょうがないから付き合ったげるわ』
思い思いに参加表明をする。
「ならば決まりだ。試練とされる問題が起こったなら、攻略対象を絡めずに私たちで解決してしまう。首尾よく聖女とやらが現れて、解決に努めてくれるなら尚よし!」
冷笑を浮かべてエドヴィンが告げる。
「警戒すべきは のこる4人の攻略対象で、火龍の変化体、水の精霊王、王子、大魔法使い だったな!」
アルルクが力強く言って、エドヴィンと頷き合う。
『ふふふ、あんたも大変ねぇ』
(なんだろう、味方してくれるみたいなんだけど、どうにも色々引っ掛かるのよね……。何で、わたしを助けるのに他の攻略対象の話が出て来るの? モブには全然関係無いのにね。まぁ、リュザス様探しの味方が増えたと思えば、大したことない引っ掛かりよね!)
一つの大きな試練を無事(?)乗り越えたことで、レーナは自分の解決力に少しばかりの自信を持ち、前向きになっていた。
「じゃあ、みんなで頑張ろうねっ!」
「ああ!!」「おう!!」
レーナの言葉に、少年2人が力強く応え、再び緑の小さな少女は腹を抱えて笑い転げた。
こうしてレーナ
レーナはただ、モブには過ぎたる
しかし、最高神はひとつ大きな間違いを犯していた。
外ならぬ最高神自身が、功を焦ったことにより、定型路線から外れ始めた物語の辿る先は、彼の思惑からも大きく外れ始めていたのだけれど―――
それに気付くのはもう少し先。
蛙化の洗礼が、彼を待ち受けるのだ。
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