ドワーフの鉱石祭り
ドワーフの日記より抜粋
先日の地層調査にて、興味深い鉱物を発見した。
名前がつけられて人間の世界へと広まっていった
クリスタルやゴールドとはまた違う
様々な物質が地層から出てきた。
これは土なのか、石なのか。
透明感のある部分もあるが
真っ黒な物質が混ざっている部分もあり
非常に興味深い。
新しい地層から採掘をして
成分を調査しようと思う。
欠片を分析するため、少し削り、形を整えた。
今回は研磨せずに、より自然に近い形での標本とする。
分析が終わるまで厳重に保管するとしよう。
Ⅰ
先日ひどい目にあってからは
新しい地層の調査に入る時は必ず
数値を量りながら採掘を進めるようになった。
あれ以来、匂いがきつい地層には
出会っていない。
ただ、最近はキラキラと光るものや
先が透けて見えるほど透明な石など
これまでにあった鉱石以外に
柔らかく弾力のある物質が混ざっていたり
異様に艶があったりする
変わり種が多く報告されるようになった。
Ⅱ
この世界には、水、火、風、土
4種類の大きな力がある。
それぞれの力の源となるジュエルと呼ばれる石は
いわくつきの強力な魔力が宿る石。
その昔、大きな争いで力を競い合った魔法使いが
それぞれの力を乱用した罪を、その一生をかけて償うために
人柱となって石に封印されたと言われている。
そのジュエルを奪い合う争いはこれまでに2度起きていて
どちらも何とか収まったが
次がないとは言い切れない。
どうしたら争いはなくなるのか。
Ⅲ
これまでの概念にとらわれてはいけない。
2度目の争いの源となったあのジュエルもそうだ。
急にどこからともなく現れて、この世界をかき乱す。
神がこの世に解き放ったに違いない。
我々は「神」と呼ばれるこの宇宙を作った存在のおもちゃ。
神が存在する数だけ、この宇宙も存在する。
神はそれぞれ、「自分が住む世界」・「モノを作って遊ぶ世界」・「お気に入りを保存する世界」の3つの世界を持っている。
我々は、モノを作って遊ぶ世界の中に解き放たれた存在なのだ。
神は我々の様子を見て楽しんでいる。
新たな面白いモノができれば、躊躇なく解き放つ。
そして気に入らなければ、すべてを壊す。
その、壊すためのモノを解き放ち、様子を見て楽しむのだ。
Ⅳ
今回、あのジュエルの力はコントロールされ、この世界の崩壊は免れたが
神は一体何を思っているのだろう。
どうしてもこの世界を壊したいと思っているならば
より魅力的なモノをこの世界に送るに違いない。
前と同じように、石なのか、それとも生き物なのか。
植物なのか、それとも形のない何かなのか。
予想もつかず、気持ちばかりが焦る。
「まぁ、それがこんな地層の奥深くから出てくるとは思わないけど」
あの魔法使いが口を出してきた。
前の騒動の時から、なぜか調査に同行することが多くなり
少し窮屈な時もある。
さすがは初めの人間の子孫。何か感じるものがあるのか。
この魔法使いの力を持っていれば、ジュエルの力は打ち消すことができる。
なぜ神は、この力を我々に与えたのか。
考えれば考えるほど、わからなくなった。
end
そんなことを考えながら、今日も採掘を進めた。
今日もまた、見たこともない煌めきの地層にぶつかる。
赤く、やわらかい。
別のところは、透明で硬い。
入り混じった物質からは、特におかしな力は感じないが
非常に興味深い。
分析を早く済ませて、ろうそく屋に持ち込むとするか。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます