第66話 不安
気持ちがザワザワする。
考えても仕方のない事なんだから
考えるのを止められたら良いのに。
一つは、1月に家を出た息子の お金周りがどうなっているのか。多分、全部並べて説教をしなければならない状態になっているんだろう。どこかで捕まえて、確かめなければならない。ただまぁ毎日働いてはいる様なので、タイミングを見計らっている。
そうこうしている間に帰って来てしまう可能性もある。ニュルニュルしているからね、捕まえづらいけど どこかで網を仕掛けて無理矢理捕まえる。必ず。
もう一つはムクゲの花だ。花が悪いわけではないが
昨年の今頃は、ムクゲの花の向こうでニコニコ笑う母を見ていた。庭のムクゲは咲き始めたが、母はもうそこに住んではいない。「きっとこれで良いんだ」と
いくら自分に言い聞かせても、確信は持てない。
家に置いておけば、こんな猛暑でもやっぱり母は
ふうふう言って、今にも倒れそうになりながら
庭の世話をしていただろう。それで熱中症になったとしても、それはそれで母の本望だったと思うが
周りの我々は、わかっているのにそれを放っておくわけには行かない。母は快適なシニアマンションに引っ越し、「庭を片付けなければ」という強迫観念にも
似た使命感から解放され
しかし使命を失い多少ボンヤリを進行させつつ
無理をせず、沢山眠り、お友達も出来そうな気配だ。
広義での延命だが狭義での、病院関係の延命ではないし、社交的で色々な場所へ毎日出掛けていた、
元気な時の 怪我をする前の母の生活に
少しでも近づいて欲しい。実りの多い豊かな庭だが
キープするには相当の努力がいる。母が引っ越して
1と月しかたたないのに、庭はもうボウボウになっていた。茗荷が欲しかったが、猛暑と蚊とフキの林に
阻まれて 茗荷のそばまで行けなかった。
裏を返せば、母は昨年までは毎年、猛暑と蚊と戦いながらフキを刈って食べ、茗荷を取っていたのだ。
哀しい事だけれど、それが出来ない私に
あの家に住む資格はない。
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